泥臭さがない?
著名な文学翻訳家・施小煒氏は、「良い作品が売れるというのは、全く矛盾しない」と村上春樹氏を擁護する見方を示す。一方、文学界は、新作を出すたびに大ヒットを記録する村上春樹氏に対して、積極的な見方を示していない。例えば、元東京大学総長の蓮実重彦氏は、「小説を器、言葉を装置、人物をシンボル、読者を消費者にしている。泥臭さやきなくささが感じられない」と、村上春樹氏の作品を批判している。
「流行」と「作品の深み」は、両立できないのだろうか。2012年にノーベル文学賞を受賞した中国人作家の莫言(モーイエン)氏は、「村上春樹氏の作品の中には、評価できる点がたくさんある。現代性や若者が身近に感じることができる作風は、私の作品にはないもの。だから、とても尊敬している」と敬意を示している。
不運も重なる?
「文学的要素」以外に、偶発的な要素も関係している。過去のノーベル文学賞の受賞記録を見ると、2012年に莫言氏が受賞したため、この先数年は、アジアの作家に授与される可能性は低い。また、川端康成氏や大江健三郎氏などが、過去に同賞を受賞しているため、ノーベル賞の「世界のさまざまな民族に」という精神からして、日本人作家が再び受賞する可能性は低い。しかし、同賞を受賞するかどうかに注目が集まり、村上春樹氏の作品が、世界でさらに広く知られるようになっているのも事実だ。(編集KN)
「人民網日本語版」2014年10月10日