このところ、中東情勢がさらに緊迫している。日本の安倍晋三首相は11日、専用機に乗ってサウジアラビア、アラブ首長国連合(UAE)、オマーンの中東3カ国への5日間の訪問をスタートした。アナリストは、「安倍首相の今回の訪問の狙いは中東地域の緊迫状況を緩和するための外交努力であるが、より重要なことは関係各方面とエネルギーの安全保障について意見を交換し、日本経済の『生命線』の憂いを取り除くよう確保することにある」との見方を示した。「経済参考報」が伝えた。
日本政府は国内世論の反対を省みず、現在のような米国とイランの関係が極度に緊張する情勢の中、予定通り自衛隊を中東海域に派遣して任務に当たらせる。安倍首相が中東訪問に出発した同じ日に、日本の海上自衛隊のP3C哨戒機2機が沖縄の那覇航空基地から中東地域に向けて飛び立ち、計画によれば今月20日から情報収集活動にあたるという。2月2日には、護衛艦「たかなみ」クラスのヘリコプター搭載護衛艦が神奈川県の横須賀基地を出発して中東地域に向かう。日本政府は、「海上自衛隊の哨戒機は中東のオマーン湾、アラビア海、バブ・エル・マンデブ海峡に赴き、情報収集や船舶保護などの任務を遂行する」と説明した。
昨年以降、安倍首相は米イラン対立の仲介者となり、両国の間の緊張状態を緩和しようとしたが、この外交努力は実らなかった。イランを刺激しないようにするため、海上自衛隊は中東・ホルムズ海峡の安全確保を目指す米国主導の有志連合には参加せず、活動範囲ではイランに近いホルムズ海峡を避けるようになった。
長年にわたり、日本のエネルギー輸入は中東地域への依存度が非常に高かった。1970年代に第一次オイルチョックが起きた際、日本はこうした状態の潜在的な危険性を認識したため、エネルギー政策の制定ではクリーンエネルギーの開発を大々的に提唱し、中東の石油に対する依存度を引き下げようとした。87年には中東の石油が日本の石油輸入量全体に占める割合は68%まで下がった。しかし11年3月11日に起きた地震で東京電力の福島第一原子力発電所で放射能漏れ事故が起こった。震災から何年も経ったが、原発の全面再開の道のりはスムーズではなく、日本は石炭や石油の化石燃料による火力発電によって、これまでの原発の発電量に代えようとし、その結果、現在は発電燃料の中で化石燃料が80%の割合を占めている。日本の経済産業省のまとめた統計では、18年の日本の中東産石油への依存度は第1次オイルショック時の78%よりも高く88.2%に達するという。
日本の石油輸入量の9割近くを占める中東産石油は、船舶によって中東海域経由で日本に運ばれる。統計では、日本のホルムズ海峡を通過する船舶は毎年3900隻を超え、このうち2600隻が石油タンカーであり、バブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶は約1800隻に上る。日本の河野太郎防衛相は10日、「こうした観点から考えて、石油と天然ガスを運ぶ船舶の安全を保障することは、日本経済の『生命線』を守ることにほかならない」との見方を示した。
UAEとオマーンの両国は海上自衛隊がこれから活動を展開するオマーン湾とアラビア海に面しており、安倍首相の今回の訪問の重要な任務は自衛隊派遣について沿岸国の理解と協力を求めることにある。また現在、日本にとってサウジアラビアは1番目の石油輸入国、UAEは2番目であり、両国産の石油を合わせると日本の石油輸入量の63.4%を占める。安倍首相と両国の首脳との会談ではエネルギーの安全保障問題が重点になるとみられる。
日本の経済学者・高橋洋一氏は、「日本には200日分以上の石油の備蓄があり、今しばらくは中東地域の緊迫情勢による非常に大きな衝撃はないとみられる。しかし米国とイランの緊迫情勢が長期化したり、ホルムズ海峡に何らかの事態が生じたりすることがあれば、日本の石油備蓄はおそらく底をつき、そうなると石油の供給が危機に陥る可能性がある」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年1月14日