海外での人件費の値上がり、大幅な円安、政府がうち出す地方経済振興策という3つの要因が、海外投資を行う日本企業に生産拠点の一部を国内回帰させることを決意させている。パナソニック、シャープ、TDK、キャノン、ダイキン、無印良品などの日系企業は、海外工場の一部の国内回帰をすでに決めたり、検討したりしている。海外の人件費がこのまま値上がりを続け、円安が長期化するなら、海外にある日本企業に国内回帰ラッシュが起こる可能性もある。「経済参考報」が伝えた。
ここ数年来、中国と東南アジア諸国では最低賃金が相次いで引き上げられた。現地では給与や社会保険料などの人件費が上昇を続け、雇用コストが大幅に上昇した。独立行政法人の日本貿易振興機構(ジェトロ)がこのほど発表した在中国日系企業の給与の調査結果によると、ここ約10年間に日本の対中投資企業の平均月給は米ドル建てで2倍にふくれあがった。タイでは2013年に最低賃金が40%引き上げられ、14年も5%引き上げられた。インドネシアでは13年に40%引き上げられ、60%引き上げられた地域もあった。ベトナム、ミャンマー、インド、パキスタン、バングラディシュの給与をはじめとする人件費も2けたの伸びを示した。
12年末以降、安倍政権は15年にわたったデフレを終わらせるため、「大胆な金融政策」を採用して、物価上昇と円安の誘導に力を入れた。現在、国際外国為替市場の円の対米ドルレートは基本的に1ドル=120円前後の水準を維持している。12年9月の77円に比べ、約43円も値下がりしたことになり、値下げ幅は50%を超える。海外の人件費上昇と大幅な円安にともない、海外から輸入する製品の一部は日本国内で生産したものより割高になり、海外で生産し国内に輸出して販売するという経営モデルにはメリットがなくなった。
安倍政権はが昨年制定した「日本再興戦略改訂版」(新成長戦略)では、企業が本社や工場を地方の中小都市に移すことを奨励し、税金面での優遇政策も制定した。企業の本部・工場を三大都市圏から地方都市に移す場合、本社ビルや工場の建設、設備投資などにかかる費用の7%を法人税額から控除するというものだ。中小都市での生産能力を拡大した場合は、投資額の4%を控除するとした。海外から国内に回帰する場合も同等の待遇を受けられる。
国内外の経済情勢の変化に踏まえ、日産自動車、ホンダ、パナソニック、キャノン、シャープ、TDK、小林製薬、無印良品など各社が一部の工場の国内回帰を決定したか検討中だ。