今年の「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)期間中、中国メディアは「4つの全面」(小康<ややゆとりのある>社会の全面的完成、改革の全面的深化、全面的な法による国家統治、全面的で厳格な党内統制)という新たな目標に注目した報道を行った。中国社会は今後、この4つの面で重大な変化を迎えることとなる。(文:陳言・日本問題専門家)
中国は1970年代、10年の混乱から抜け出し、経済発展を模索し始めた。その際、国家経済の具体的な発展目標とされたのは「翻両番」(4倍増)というものだった。1980年に鄧小平氏がこの目標を打ち出した時、人々は、中国の一人当たりGDPは当時の311ドルから20世紀末には約1千ドルに増えるだろうと予測した。当時、日本の一人当たりGDPは9300ドルで中国の30倍だった。日本の一人当たりGDPは2000年には3万7303ドルに上がり、一方の中国は949ドルに上がった。中日間の差は40倍となった。中国の経済発展は4倍という目標をほぼ実現したものの、20世紀最後の20年、中国は日本との格差を縮めることができなかった。
中日間の格差の風向きが変わったのは21世紀に入ってからである。2013年、中国の一人当たりGDPは6767ドルに達し、2000年の7倍に拡大した。一方の日本の一人当たりGDPは21世紀に入ってから3万7千ドル台で足踏みし、2014年になっても3万7539ドルにとどまり、14年間でわずか236ドルしか増えなかった。
小康社会の全面的建設は、中国国民の財産をあまねく高めるものでなければならない。この段階においては、単純な資本蓄積は完全に終わり、一般国民が財産の一部を投資し、企業を設立するようになる。この時期には大量の新たな産業が生まれるようになる。経済発展はさらに旅行などに巨大なビジネスチャンスをもたらす。
中日関係から見ると、小康社会の全面的建設の段階は、中日経済の交流を促進し、より多くの中国人観光客を日本の観光・買い物に向かわせることとなる。一般国民の間の相互理解が深まれば、中日の民間の感情的対立も緩和されることになる。