文化・社会部門審査委員の講評:
番号3「『ぼっち席』に関する日中比較考察―社会心理学の射程を中心に」:
「『ぼっち席』に関する日中比較考察」は、身近な現象を取り上げ、社会心理学の方法を用いて対人関係に対する日中間の意識の異同の解明を試みた社会文化論である。前半は、「ぼっち席」をめぐる代表的な言説を収集整理し、利用者である大学生を対象にアンケート調査を行い、社会心理学の方法でその結果を分析し、これまでの「ぼっち席」という現象に対する認識の不足を指摘し、問題の多重構造性を指摘した。それを踏まえて、論文の後半では対人関係価値の構造の日中間の異同を考察したが、一本の論文では扱いきれない問題提起をしていた感がある。関心が赴くままに展開するより、焦点を絞って深く掘り下げたほうがよかったかもしれない。
番号6「映画『呪怨Ⅱ』における恐怖と女性」:
「映画『呪怨Ⅱ』における恐怖と女性」は、Jホラーの怖さは何か、という問いに対し民俗学的方法で答えを探った研究である。『呪怨Ⅱ』の幾つかのシーンを通して、髪の毛と出産の二つの要素を挙げ、日本人の心理の深層に潜んでいる恐怖を解明した。「面白い!」「不思議!」から芽生えた「でも、どうして?」、というたいへん素直な問題意識と、真摯に学問的探求を試みた姿勢、その問題意識に対する共感を呼び起こし、問題究明に読者を引きずりこむ力を有する論文の論理構成を評価したい。
番号13「アベノミクスの現状とその日本経済への影響について」:
「アベノミクスの現状とその日本経済への影響について」は、2012年以降の日本経済について、様々な側面から分析し、アベノミクスが日本経済にどのような効果をもたらしたかについて論じたものである。学部生の卒論で扱うにはテーマが広すぎ、論点がつかみにくかった。そのせいか、論文全体が要約にとどまっている印象が強い。
番号14「女性解放運動と日本女性教育の関係についての一考察」:
「女性解放運動と日本女性教育の関係についての一考察」は主に日本における女性解放運動の歴史を振り返り、それが日本の女性教育にどのような影響を与えたか、という問題をめぐって行った考察である。構成はやや女性解放運動の回顧に偏っており、女性教育の歴史や二者の関係に対する分析が十分に展開されていなかった。やはり学部生の卒論で扱うには、テーマの設定がやや広かったようだ。
艾菁 復旦大学専任講師
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