第十五回「日中友好中国大学生日本語卒業論文コンクール」で、私が指導した林白箫さんの論文が文学部門で優秀論文に入選しました。そのご縁で、第十六回の論文審査にあたり、審査員の一人に加わることになりました。これは、私にとって、たいへん光栄なことであり、責任の重い仕事でもありました。まず、この機会を与えてくださった日中市民友好協会に感謝を申し上げるとともに、十六年にわたり、コンクールの開催にご尽力いただいた方々に敬意を表します。
さて、この度は、社会文化部門全八本の論文を読ませていただき、全国から集まった日本語専攻の卒論のレベルの高さと、学生たちの日本に対する関心の広さを実感しました。
社会文化部門で論じられたテーマは「ぼっち席」と対人心理の中日比較、Jホラーと日本的恐怖の民俗学的由来、アベノミクスの効果分析、フェミニズムと日本の女性教育史、日本における同性婚合法化の可能性、職場におけるハラスメント、電子商取引など、実に多種多様でした。
読み手として、どの論文を読んでも、扱ったテーマについてきちんと整理された情報や知識を得ることができました。それは、どの論文の書き手にも、一定の情報収集、情報整理、情報伝達の力が備っていることの現れであるといえましょう。学部生を卒業する時に、これだけの力が身についていれば、将来、確実に日本語力と情報伝達力を生かして社会貢献ができるでしょう。それは中国の大学で日本語教育に携わる一員としてたいへん嬉しいことであり、誇りに思えることであります。
しかし、論文は情報収集や情報整理にとどまって満足してよいものではありません。書き手の素直で力強い「問い」、真剣な「調査」、綿密な「思考」、冷静な「分析」がなくては、読み手の共感を呼び起こし、書き手とともに問題究明の旅を最後まで成し遂げてもらうことができません。
今回の応募論文を読んで、改めて思いましたが、大学生の卒論は、規範や様式はもちろん重要ですが、まず大事にしていただきたいのは素直な問題意識です。等身大の「問い」があってこそ、地に足のついた研究ができます。
卒論は、大学生活における自らの研究の集大成であり、大掛かりな作業です。4年間の勉強で身につけた知識、方法、能力をフルに生かして楽しむ、やや冒険のある知的な旅にしていただければ嬉しいです。
最後になりますが、このような交流の場を作ってくださった日中市民友好協会に改めて感謝を申し上げ、「日中友好中国大学生日本語卒業論文コンクール」のますますのご発展をお祈りして、第16回卒業論文コンクールの審査に参加した所感とさせていただきます。
艾菁 復旦大学専任講師
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