第16回日中友好中国大学生日本語科卒業論文コンクール審査委員の講評
言語部門審査委員の講評:
番号23「動作進展の視点から見る有対他動詞の可能形と有対自動詞の選択― 否定表現を中心に ―」:
「動作進展の視点から見る有対他動詞の可能形と有対自動詞の選択―否定表現を中心に」は、動詞使用の選択が求められる場合の一例として、その選択の傾向性に着目し、「実現不可能」という意味合いを表す場合の一般化したルールを考察する論文である。当該論文は先行研究を踏まえ、日本語母語話者にアンケート調査をして得られたデータをベースとし、論理的分析を展開した。当該論文は視点理論を駆使し、視点を軸に理論構築を試みたところは評価すべきである。その結論は言語学のみならず、日本語教育の現場にも示唆を与えると思われる。
番号22「特殊的え段仮名―感情的語用と言語連音をめぐって」:
「特殊的え段仮名―感情的語用と言語連音をめぐって」は、「論文とは何か」という根本的な問題を我々の前に突き付けられた論文であろう。そもそも、論文は感想文ではなく、結論を出す前に何かの根拠がなければ何にもならない。また、論文は論理整合性が求められるもので、現象の記述で終わってはならない。この論文は着眼点は悪くないが、論の部分が貧弱で、論理的思考回路の構築ができていないのが残念だと言わざるを得ない。
番号2「一年生の日本語授業におけるアニメ動画利用状況の調査及び分析」:
「一年生の日本語授業におけるアニメ動画利用状況の調査及び分析」は、日本語教育分野の論文としてその現実性がまず評価すべきであろう。日本語の授業におけるアニメの利用は誰でも知っているが、データをもってその実際の状況を分析した上で、その教育効果利用方法などを論ずるのは有意義なチャレンジと言えよう。ただ、論文と調査報告書とは、根本的な違いがあるから、全般の構成を論文らしく工夫するのが必要であろう。
王健宜 南開大学教授
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