○「誤りを自覚しながら、指摘や批判を恐れて改めようとしない」日本政府の態度
なぜ、これほど「差」があるのだろう?2つの測定器が示す測定データの差について、田尾氏は、「これ(村役場前の計測器)は、政府が設置したもので、設置前に自衛隊が地面の除染作業を徹底的に行ったため、検出される放射線量は絶対に高くない。これが政府のやり方だ」とその理由を指摘した。
真相は「消し去られた」。その後に残ったものは、「忘却」ではなく、「憤り」だ。
2015年、朝日新聞と福島の地元メディアが発表した合同世論調査の結果によると、「政府による原発事故の処理方法に対して不満を感じる」と答えた福島県民は7割を上回った。特に目立ったのは、子供の甲状腺がんをはじめとする健康問題に対する懸念だった。日本政府は、この問題への取り組みについて曖昧な態度を取ったため、国内外の関心と疑惑はますます高まった。
2015年末、岡山大学・津田敏秀教授の研究グループが、国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology(エピデミオロジー)」に研究論文を発表した。同論文では、福島県に住む子供の甲状腺がんの罹患率は、全国平均の20倍から50倍に上り、統計学上の誤差の範囲を大きく超えていると指摘され、今後の患者数がさらに増えることは避けられないとの見通しが示された。だが、同論文が発表されてから現在に至るまで、日本政府と福島県は、この論文の内容を重視するどころか、反発や批判の立場に立っている。
国際環境疫学会は今年1月、日本政府に書簡を送り、福島の子供たちの高い甲状腺がん罹患率に対して「憂慮」の意を示した。また、福島で調査活動を実施するための専門家チームを組織・派遣することも提案した。だが、日本の環境省は、「同学会から送られた書簡は参考とするが、持続的な追跡調査などの対策措置については、福島県がすでに着手している」と回答した。
このように、国際的な調査活動を行うという提案・要求について、日本政府からは前向きな回答は得られず、それの提案が実を結ぶことはなかった。