中国の科学者は火星探査ミッション「天問1号」で取得した科学データを利用し、現在の火星の地表浅部の詳細な構造と物性的特徴を解明した。火星の地質変化及び環境・気候変動への認識を深めるための重要な根拠を提供している。関連する研究成果は北京時間9月26日夜、国際的な学術誌「ネイチャー」に掲載された。
中国初の火星探査ミッション「天問1号」に搭載された月面探査車「祝融号」が2021年5月15日、ユートピア平原南部の予定着陸エリアに着陸し、巡回探査活動を開始した。ユートピア平原は火星最大の衝突盆地で、かつては海だった可能性がある。これは早期の火星に居住に適した環境があった可能性を示している。詳細な火星地下構造と物性的情報は、火星の地質及び居住に適した環境の変化を研究するための鍵となる根拠であり、火星探査の重要な内容だ。
「祝融号」の探査エリアはユートピア平原南部で、レーダーの周波数帯が比較的広く、最大探査深度は実質80メートルにのぼる。
科学研究者は最新の研究において、113火星日にわたる走行距離1171メートルに達する「祝融号」の低周波レーダーデータの分析を掘り下げ、地下80メートル以内の地表浅部の高精度構造積層画像と地層物性的情報を取得した。同エリアの厚さ数メートルに及ぶ火星土壌層位の下に、上に向かい細くなる2つの層序が存在することを発見した。これは約35−32億年前からの複数の時期における水活動関連の火星地表改造プロセスを反映している可能性がある。
また「祝融号」の次表層探査レーダーの主な目的の一つは、現在のユートピア平原南部の地下水・氷の有無の確認だ。低周波レーダーのイメージング結果によると、地下80メートルまでの範囲内は信号反射の強度が安定しており、媒質の誘電率が比較的低くなっている。これは巡回ルートの下に水を豊富に含む層が存在する可能性を否定した。熱シミュレーションの結果も、液体の水や硫酸塩または炭酸塩が、「祝融号」着陸エリアの地下100メートル内に安定的に存在することが困難であることを物語っている。しかし現時点では共晶氷が存在する可能性を排除できない。(編集YF)
「人民網日本語版」2022年9月27日