【第117回】ストライキ( 法律論)
前回総論においては、「中国の現行法には、労働者のストライキ権利を認める明確な法規定はなく、労働組合によるストライキの発動、組織についての権利義務も与えられてはいない」という結論を提供しました。現行法では、労働者にストライキ権利があることは明確にされていませんが、かといって、ストライキを厳格に禁止するものもありません。以下の立法の経緯または立法の趣旨から見ると、通常の場合、労働者のストライキ権利はある一定程度は許容されていると思われます。
1、1954 年の「中華人民共和国憲法」には労働者にストライキの権利が与えられておらず、1975 年と1978 年の"文化大革命"時には、「中華人民共和国憲法」に労働者のストライキの権利が短期間のあいだ明確にされたものの、現行憲法である1982 年の「中華人民共和国憲法」ではこの権利はすぐに取り消されました。
2、2001 年7 月、「経済、社会及び文化権利国際公約」が中国で発動し、この公約中には労働者によるストライキの権利が規定されています。中国政府は、この公約を受け入れる際に、ストライキ規定に対して留保意見を提出せず、事実上、国際条約のレベルでは、労働者のストライキの権利について賛同または黙認していると解釈されます。
3、「裁判官法」(2001)、「検察官法」(2001)や「公務員法」(2006)などの法律で、裁判官、検察官や公務員らがストライキに関係することをそれぞれ禁止する規定、ならびに「戒厳法」(1996)で戒厳期間のストライキを禁止する規定以外には、労働者のストライキ権利を禁止する法律はありません。
4、「工会法」(2001)第27 条には、労働者による操業停止(中国語:停工)やサボタージュ(中国語:怠工)が発生した場合、労働組合(中国語:工会)は一定の救済を与えなければならないと規定されています。つまり、労働組合は従業員を代表して、関係者と協議して従業員の意見または要求を反映し解決意見を提供しなければなりません。企業は労働者側の合理的要求を引き受けなければならず、労働組合は企業に協力して早急に生産秩序を回復させなければなりません。