ますます競争が激しくなる自動車市場において、ライバルたちが製品の布陣をむやみやたらと拡大し、スローガンを大声で叫び、自動車産業のチャンピオンの玉座に座ったと喧伝する中、トヨタは常に「クルマづくりより人づくり」の理念を踏まえてきた。トヨタの目には、中国市場での真の国産化実現には、進んだ技術と製品を導入する必要があるだけでなく、人材の現地化を実現することがより重要なこととして映っていた。
トヨタの「クルマづくりより人づくり」の戦略は大きな成果を収めた。これまでに中国人技術者260人以上がトヨタの自動車研究開発センターに入社し、ハイブリッド技術国産化の研究開発に参加してきた。
2つ目の出来事はトヨタが新車4台を引っ提げて2015年の中国国際福祉博覧会に出展したことだ。トヨタは博覧会に参加した唯一の完成車メーカーで、出展したカローラ、ヤリス(ヴィッツ)、アルファードの新モデル、ハイエースのそれぞれの福祉車両には、身体が不自由な人の乗り降りに便利なように回転するデザインや車外に伸びるデザインが採用され、博覧会で大きな注目を集めた。
世界の福祉車両市場をみると、障害者に対して日本人が最もきめ細かく配慮し、トヨタは日本で福祉車両を最も多く製造するメーカーでもある。
トヨタが福祉車両を重視するのはなぜか。福祉車両は中国市場におけるトヨタにどれほどの営業利益をもたらすのだろうか。まずうなづけることは、福祉車両は中国にそれほど大きな市場があるわけではないということだ。この博覧会に出展したメーカーの顔ぶれをみると、自動車メーカーの多くが福祉車両市場を重視していないことがわかり、言い換えれば福祉車両市場には巨大な潜在力があるということだ。