――北京では仕事をするつもりはなく、そもそも北京で着付けやピアノを教えるような機会や需要もないだろうと思っていました。
それが、ピアノが出来ると知人に言うと、その日のうちに日本人が通うカルチャーセンターに連れていかれ、そこで教えることになりました。すると、思っていた以上に、需要があったようで、生徒さんから次々と人を紹介され、どんどん生徒が増えていきました。
着付けも、日本の友人がイベントで着物を着るというので、足りないものがあればお貸しすると話したら、ぜひ習いたいと依頼されたり、ピアノの生徒の親御さんから、着付けしてほしいと頼またりして、口コミで広がっていきました。
北京では、このように軽く言ったことが、あっという間に実現してしまうところがあります。宣伝もしないのに、いつの間にか仕事が自然発生的に増えていきました。
今では日々忙しく働きながら子育てをしている五十嵐さんだが、仕事と子育てを両立する上で、北京の西の環境は暮らしやすいという。
――言葉の問題もあり、子供が小学校に上がった頃から、毎日塾に通わせて宿題を見てもらっているのですが、この辺りは、教育熱心な家庭が多いので、塾が非常に充実しています。しかも、塾側は学校の終了時間やカリキュラムまで把握していて、塾の先生が学校まで子供たちを迎えに行ってくれるんです。親たちは、塾が終わる時間に子供を迎えにいけばいいのです。また、夕食のサービスもあるので、仕事で遅くなるときは、夕食を頼んで、その時間に迎えに行っています。このシステムには、大変助けられてますね、
それに、西側に住んでいると守られているなと感じることがあります。2年前、反日デモが起こっている最中に、子供の学校の保護者会に参加しましたが、いつもと変わらない日常でした。子供たちもいつも通りランドセルを背負って、普通にクラスメートと日本の話をしていましたし、人によっては、東でそんなデモが起こっていることさえ知らない人もいました。東側は外国人は多いんですけど、逆にデモなどが起こると、周囲も一気に冷たくなりますが、こっちではそういうことは全くなかったですね。