2020年の春運(春節<旧正月、2020年は1月25日>期間の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)が今月10日に幕を開け、数多くの高速列車が昼も夜も休まず中国全土各地を走り回っている。そんな中、平均時速40キロ未満で走る四川省のレトロな深緑色の旧型普通列車車両5633号が逆にひときわ目立つ存在となっている。同省の普雄駅を出発し、楽山市と攀枝花市を結ぶ同列車の運行距離は353キロ。山あいや谷あいの小さな26駅に停まり、運賃は2元(1元は約16円)からという安さだ。光明日報が報じた。
5633号は、1970年代から今まで、50年間運行し、これまでの利用者の数は延べ1千万人以上に達している。高速鉄道が急速に発展する今でも、この「鈍行列車」は、運賃が安く、便利であるため、沿線の村などの住民が、都市部に行って買い物をしたり、農産品を売ったり、働きに出たり、学校に通ったりする際の「住民の足」代わりとなる交通手段となっている。今年の春運期間中も、都市部と農村部を繋ぐこの「鈍行列車」は依然として、ゆったりとしたペースで旅客を運んでいる。
今月15日午前8時、四川省凉山彝(イ)族自治州喜徳県尼波郷の簡易駅のプラットフォームで、劉翠霞さん(47)が、列車に乗って西昌駅まで行き、農産品を売る息子・馬志祥さんに「豚肉とステムレタスを売り終わったら、弟や妹にあげるプレゼントを買うんだよ。財布と携帯電話は絶対になくさないように注意するんだよ」と声をかけていた。
同自治州喜徳県で生まれ育った少数民族・イ族の劉さんは、「物心ついたころから、ずっと5633号を利用している。結婚する時も、この列車に乗って西昌市に行き、アクセサリーを買った。同列車は常に私と外部の世界をつなぐ唯一のルートで、信頼できる親友のような存在。安いし、時間通りだしね」と話した。
高速鉄道や飛行機などの交通機関が日に日に普及している今も、「鈍行列車」は必要な存在なのだろうか?
成都鉄路局成都客運段の5633号の列車長は、「高速鉄道に比べると、このような『鈍行列車』には、寝台車両もなければ、レストラン車両もない。しかし、運賃が安いため、貧困地区の住民にとっては、帰省する時に最も手頃な乗り物となっている。凉山イ族自治州の住民にとって、5633号は、学校に通い、買い物に出かけ、結婚式の時に使う『足』となっている」と話す。
今年の春運期間、5633号のような公益性を備えた「鈍行列車」が中国全土で81本運行している。経済利益という観点から考えると、それらの列車は、「赤字」経営であるものの、民生という観点から考えると、一般の人々の需要に対応しており、そうした人々に対する「思いやり」をのせて今日も走っている。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年1月17日