小売産業に従事して20年になるベテラン関係者は、「カルフール、スパー、メトロ、テスコ、CPロータスなどの外資系スーパーが中国に初出店した時の様子を見たことがあれば、コストコの爆発的人気もよくある光景に思えるかもしれない」と述べた。
同関係者によると、「しかし外資の売り場は今どんなことになっているだろうか。カルフールは蘇寧に買収され、テスコは華潤に買収され、メトロは買収してくれる企業を探している。残りの2社は既存店を維持しているが、業務は縮小され、可もなく不可もなくといった業績だ。コストコは大陸部市場進出にあたり、よいタイミングを選んだといえる。なぜなら、中国で消費のモデル転換と高度化の大きな波が起きている。▼有料会員制度が若い消費者に幅広く受け入れられるようになっている。▼以前に比べて、新しい世代の消費者が強調するのは商品のコストパフォーマンスであり、単純に低価格を追い求めることはしない。▼消費シーンの体験とサービスが先導する実店舗ビジネスが復活しつつある。▼ECが相次いでオフライン市場の配置を進めている」と述べた。
タイミングが良かったことは、コストコの米国モデルを中国に持ち込めば必ず成功するということを意味しない。
実際のところ、コストコは年会費が最大の収入源だ。会費を納めることで、会員のロイヤリティは上昇する。これに巨大な売り場、ほとんどの店がやや不便な場所にあること、米国家庭のショッピング習慣が加わり、コストコの利益の半分以上は自動車、フードコート、ガソリンスタンドなどの周辺サービスから生まれている。2017年度の米国市場での会員継続率は90%、カナダでは87%だった。米国では有料会員1人あたりの年間消費額は2554ドル(1ドルは約106.1円)で、一カ月あたり213ドルになる。大陸部初店舗は閔行区という中心部から外れたところにあるが、完全に米国モデルを模倣するのは、中国ではやはり難しいようだ。
コストコが米国で商品を低価格で販売できているのは、多くの店舗が土地と建物の所有権をもっていて、家賃が不要だからだ。それに対し、中国では店舗開設のための土地取得コストが米国よりも高く、商業不動産企業との協力が主な選択肢になり、家賃からは逃れられない。中国の商業不動産企業の家賃体系は店舗の業績と連動するケースが多く、たくさん売っても家賃コストを抑えられる可能性は低い。
またコストコが掲げる「大容量」の商品が「小規模」な中国の家庭に合うかどうか、中国の家庭が満足するかどうかも、コストコモデルの普及拡大の可能性や商品コストの多寡といった大きな要因を決定する。
ECの競争がオンラインからオフラインへと広がり、盒馬鮮生や蘇寧小店などの背後にはさまざまなECがバックにいる。こうした中国をよく理解する新小売のプレイヤーたちの間で、コストコが中国式のやり方を身につけられるかどうかは、時間による検証を経なければわからない。(編集KS)
「人民網日本語版」2019年8月30日