だがジャパンタイムズが指摘したように、安倍首相は「国際安全保障における日本の役割」を高めようとしてのぼせ上がり、日本の対処能力の欠如を軽視し、日本国民が海外で直面するリスクを過小評価した。「人質危機」によって「安倍政権の甘さ」がさらにはっきりと示されたのだ。
第2に、平和憲法改正の問題だ。国際世論は今回の「人質危機」と安倍首相の憲法改正との関係に一致して注目している。多くは安倍首相が「人質危機」を利用して憲法改正の「十分な理由」とすると予測する。つまり現行「平和憲法」は他国との交戦を厳禁しているが、「『人質危機』はすでに平和憲法では在外日本人の安全を守れず、平和憲法改正が必須であることを物語っている」ということだ。実際には、在外日本人の安全保護と平和憲法改正とは必然的なつながりはない。「人質危機」は安倍首相の憲法改正の一見立派な「口実」に過ぎず、在外日本人の安全を守るのに最も重要なのは日本の外交政策の修正であるはずだ。
今回の「人質危機」の発生は、対米追従一辺倒の安倍外交の「結果」だ。第2次安倍政権発足以来の外交政策はただ対米追従であり、米国による中東での「テロとの戦い戦略」に歩調を合わせるのも当然例外ではない。安倍首相が中東訪問時に打ち出した「2億ドルの対テロ支援」の本質も米国に見せるためのものだ。まさにこの「全力で米国を頼みとする」外交は、今回の「人質危機」で極めて大きな「アキレス腱」を露呈した。「イスラム国」は、日本は親「イスラム」国ではなく、「極端な親米」国であると考えたのだ。こうした一辺倒の「親米外交」によって、安倍外交は動きの余地がどんどん狭まり、「人質事件」によって安倍外交が「自らの手足を縛る」ものであることがはっきりと示された。
民主党の徳永エリ参議院議員は、「人質事件」の発生が安倍首相が中東訪問時に「イスラム国」に対する打撃への支持を大々的に宣言したことと関係があるのは明らかだと指摘。イスラム世界を含む国際社会は元々、日本を「戦争を放棄した」国だと考えていたが、集団的自衛権の行使容認、憲法解釈の見直し、「武器輸出三原則」の変更といった安倍内閣の一連の動きの後、日本に対する国際社会の見方は変化したとの認識を示した。
この指摘は確かに本質を突いている。安倍首相の本来の虫のいい計算は、日米同盟の強化、軍事・防衛政策の相次ぐ打ち出しによって、日本を米国など西側諸国のように自由に海外派兵できる「普通の国」にすることだった。だが思惑通りに事は運ばず、「人質危機」によって安倍首相の戦略的布石は完全に乱された。
「人質危機」が大きな心理的不安を引き起こす中、「安倍外交」はどこへ向かうべきか。安倍首相および日本政府要人は今後の外交・安全保障戦略について考えることを余儀なくされている。