海南省の人々にとってコーヒーを飲むのはおなじみのことで、華僑が多いところとして有名な同省万寧市興隆鎮にはコーヒー文化の伝統が深く根付いている。20世紀に数多くの帰国者がここに家を構えて定住するとともに、東南アジアからコーヒーを飲む習慣も持ち帰った。彼らにとってコーヒーは生活必需品だった。
葉の生い茂った木陰で、1杯5元(1元は約19.6円)するコーヒーを手に、数人で集まって話に花を咲かせる日常が、ここでは朝から深夜まで続く。
航空撮影した海南の海墾熱作産業集団のコーヒープランテーション。(撮影・孟凡盛)
しかし長年にわたり、海南産コーヒーは生産量が少ない、知名度が低い、市場シェアが低いといった問題に直面していた。長所を伸ばし短所を抑えるため、海南コーヒー産業は発想を転換し、自由貿易港の税金優遇政策及び地理的に優れているという優位性を生かして、コーヒー加工貿易と専門化した市場建設を推進することにした。
ここ数年、中国のコーヒー市場は発展のさなかにある。国際コーヒー機関(ICO)のまとめたデータによると、2021年の中国のコーヒー産業の市場規模は3817億元に達した。一方で、海南は中国大陸部市場を後背地とし、隣には東南アジアの原料生産エリアがあり、また中国国内で唯一の自由貿易港政策と地域的な包括的経済連携(RCEP)の2つのルールが適用される省だ。恵まれた政策的条件と地理的条件により、海南はコーヒーの原材料と販売市場の「両サイドが外部にある」発展モデルを模索することが可能になり、これから世界のコーヒー貿易の重要なルートになるものと期待される。
海南・長寧にはすでに先行的に取り組んでいる企業があり、世界のコーヒー製品を販売する事業の魅力を実感している。現地にあるM1コーヒー奇幻工場では世界のコーヒー生産地の30種類近いコーヒー製品を販売し、中国内外の観光客の間で人気となっている。
昨年から、正大(海南)興隆珈琲産業開発有限公司もエチオピアからコーヒー生豆を継続的に輸入するようになり、海南のコーヒー生産ラインを通じて、中国人消費者の好みにより合った製品にして市場で販売している。
海南省農業農村庁のデータによると、2022年以降、省全体でコーヒー生産ラインが3本増加し、生産能力が新たに3500トン増加し、省全体でコーヒー製品の加工能力は最大9000トンに達したという。
万寧市党委員会の蓋文啓書記は、「私たちが興隆で自分たちでコーヒーを栽培し、自分たちで加工するという思考にとどまっていれば、コーヒー産業は永遠に大きくなることはない。そのため自由貿易港の政策を十分に活用して、大量のコーヒー豆を調達してここで焙煎し、加工による付加価値をつけて省外の市場や海外市場に供給する必要がある」と述べた。
世界のコーヒー企業も海南に目を向けつつある。今年4月には、第3回中国国際消費財博覧会が同省海口市で開催され、世界各地と海南省内のコーヒー製品が勢揃いした。会期中に、インドネシアのサントス・ジャヤ・アバディ社やベトナムのチュングエンなど世界のコーヒーメーカーが海南現地企業との間で相次いで協力契約に調印した。チュングエンはこれから海南の企業とともに澄邁県福山鎮の福山コーヒー文化風情鎮で珈琲産業チェーンを共同構築するという。
消費財博に登場した「ゼロカーボンのコーヒー」。(写真提供は海南・海墾熱作産業集団)
世界のコーヒーは海南を通って中国各地に向かい、海南の印が付いたコーヒーが海南から世界に向かってよい香りを放つ。海南は今、中国国際コーヒー貿易の主要ルートを構築するために一歩ずつ前進している。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年6月8日