ショート動画共有アプリ「抖音(中国版TikTok)」では最近、張夢真さん(アカウントネームは「打工仔小張」)が作成し、投稿している都市での日常生活に関する様々な「常識」を紹介する動画が大きな話題となり、「社会生存学のエキスパート」と称されている。
「打工仔小張」の「どうやって」シリーズ第2話「どうやって一人で病院に行くか」
張さんのショート動画が大人気になったのはある微博(ウェイボー)の投稿がきっかけだった。張さんが投稿していた「どうやってバスに乗るか」、「どうやって高速列車に乗るか」、「どうやって映画を見るか」、「どうやって海底撈(火鍋店)に行って食べるか」といった、「普通のことのように見えて、実は普通ではない生活の常識」に関する書き込みで、あるネットユーザーが、「この投稿を見た時、『こんなことを教えてもらう必要はないだろう』と感じたものの、コメント欄を見て、自分は、『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』と天狗になっている都市の人間であることに気付いた」と書き込んでいる。
その微博の投稿は3万回以上転載され、18万人以上が「いいね!」を押した。そして、たくさんのネットユーザーがコメント欄や転載の際に「ある時、いわゆる『常識』を知らず、恥をかいた」や「常識を知らなかったので、途方に暮れたことがある」といった自分の経験を書き込んでいる。
上海で頑張る江蘇省出身の張さん
張さんは江蘇省連雲港市出身で、その「どうやって」シリーズの動画では、社会人になったばかりの人に、日常生活における様々な「初体験」をどうやってクリアすればよいのか、手取り足取り紹介している。例えば、「どうやって地下鉄に乗るか」や「どうやって一人で病院に行くか」、「どうやってマクドナルドやスターバックスで注文するか」といった具合で、わずか1ヶ月の間に、100万人以上のフォロワーが集まり、ネットで大人気となった。
張さんは、「大学ではフランス語を専攻していた。普段は、写真や動画を撮影するのが好きで、誰かのために撮影するのも好き。そんな生活の中で少しずつ重ねた経験が自分の仕事につながることになるとは思ってもみなかった」と語る。
2017年に大学を卒業した張さんは、ある人気ライブ配信パーソナリティーの会社に就職。その後、毎日の忙しい仕事をこなし、ある人気パーソナリティーのサポート業務を担っている。
普通の人々に向けた普通の動画が思いがけず大人気に
今年の春節(旧正月、今年は1月22日)期間中、張さんはショート動画を見ている時に、ある女性が「高速列車の乗り方も、飛行機の乗り方も知らない。友達と遊びに出かけたこともない」と話している動画を目にした。そこで張さんは「飛行機の乗り方の動画を送ってあげる」とコメントを送った。
そして、春節が終わり、高速列車で南京市に戻る際、張さんはついでに「どうやって高速列車に乗るか」という動画を撮影した。
張さんによると、「どうやって」シリーズの動画の作成はいたって簡単で、バックミュージックもなければ、画像を張り付けることもない上、出演しているのは彼女一人。1本当たりの撮影にかかる時間は1-2時間で、編集も30分ほどで終わるという。ただ思いもよらなかったのは、一見すると日常生活におけるごく普通の常識を紹介しただけの動画が、社会に出たばかりで「人付き合いが苦手」な若者たちの心を捉え、ソーシャルメディアの潜在的な市場を発掘できたことだった。
こうした普通の人々を対象にし、常識を紹介する「どうやって」シリーズの動画に寄せられるネットユーザーのコメントは、「生活における常識が欠如していて人付き合いが怖くなっていた私を救ってくれた」といったポジティブな内容が主だ。
張さんは、「高速列車や飛行機のある大都市で生まれ育った人ばかりではない。都市での暮らしを始めたばかりの人に私の経験をシェアできればと思っている。動画で全ての知識をカバーすることはできないものの、やった経験が無いことを恐れないでほしいと伝えたい」と話す。
「どうやって」シリーズが人気になった理由は?
張さんの「どうやって」シリーズの動画に注目したのは、社会に出たばかりで少し怯えている若者たちで、その人気の主な理由はインターネットが農村エリアにも急速に普及しているおかげだと言えるだろう。
中国国家統計局の統計によると、中国の流動人口は約3億7600万人で、そのほとんどが農村から都市に移住している。中国インターネット情報センターの統計によると、2022年、中国の農村のインターネット普及率は58.8%、ショート動画のユーザーは9億6300万人で、毎年2800万人のペースで増加している。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年2月24日