ポップなスタイルで中国の伝統文化の種をまく「国風音楽」

人民網日本語版 2021年09月30日13:21

美しく、上品なメロディーで、歌詞からは伝統文化の情緒があふれている一方で、そのリズムからはさわやかな現代の息吹を感じることができる。そんな中国伝統文化の要素をふんだんに取り入れた「国風音楽」が近年、オンラインだけでなく、オフラインでも次第に人気を集め始め、ますます多くの若者がこうした音楽を視聴するようになっている。音楽配信プラットホーム・酷狗(KuGou)が発表した「2020国風音楽報告」によると、2020年、「国風」というタグが付いた歌曲の再生回数は延べ565億6000万回だった。また、「国風ファン」は1108万4000人で、その70.1%が90後(1990年代生まれ)と00後(2000年以降生まれ)だった。光明日報が報じた。

伝統文化の扉を開ける新たな方法

いわゆる「国風音楽」というのは、モダン・ミュージックとクラシック・ミュージックを融合させた音楽の新たなジャンルで、作詞、編曲、メロディー、楽器などの面で、中国伝統文化の要素をふんだんに取り入れている。

そして、多くの「国風音楽」が漢詩をモチーフにして作詞されたり、漢詩を巧みに歌詞の中に取り入れていたりしている。ドラマ「甄嬛伝(宮廷の諍い女)」の音楽を例にみてみると、「采蓮」の歌詞には楽府詩「江南」の詩句がたくさん使われている。また驚鴻舞」の歌詞のほとんどは文学者として有名な曹植の文学作品「洛神賦」が使われている。

そして「国風音楽」のメロディーはとても美しく、物悲しさを感じさせる曲や、流れる雲や川のように滑らかで抑揚に富む曲もあれば、味わい深く、しみじみとした曲もある。歌手・銀臨(インリン)の「錦鯉抄」や河図(ホー・トゥー)の「傾尽天下」、李玉剛(リー・ユーガン)の「清明上河図」などがこうした国風音楽の代表作と言えるだろう。また、メロディーに京劇の「京腔」という節回しの要素を取り入れた「国風音楽」もある。例えば、李玉剛の「新貴妃醉酒」は、京劇の音楽の特徴をモチーフにし、伝統文化の情緒を色濃く漂わせている。

さらに音楽は、「聴覚アート」と言われるが、「国風音楽」は、耳で楽しむことができるだけでなく、歌詞を聞いて頭に浮かび上がってくる映像を楽しむこともできる。中国語の表意の特徴を生かし、「国風音楽」の歌詞には、小さな橋や流れる水、冷たい月明り、赤いろうそくの光、緑の山などが出てくる。「国風音楽」に登場するものを全て描き出したなら、生き生きとした「絵画」が出来上がるだろう。音楽を聴きながら、人々はイメージを膨らませ、情緒あふれる世界に自分の身を置いているかのような気分に浸ることができるのだ。

詩詞の韻律を生かした歌詞にしても、伝統演劇の要素を取り入れたメロディーにしても、「国風音楽」のベースとなっているのは優れた中華伝統文化だ。「国風音楽」を聴いたり、口ずさんだりしたりするというのは、伝統文化の扉を開ける新たな方法なのだ。ファンがますます増加していくにつれて、「国風音楽」の影響力もますます拡大し続けている。モダン・ミュージックとクラシック・ミュージックを融合させた「国風音楽」は現在、青少年と伝統文化を結ぶ架け橋となっている。

若者好みのポップな要素も取り入れた「電子国風」

歌詞は漢詩をモチーフにしているものの、書き言葉のように難解ではない。そしてそのメロディーは伝統演劇の要素を取り入れているものの、演劇のようなマニアックなメロディーではない。伝統を継承すると同時に、今の時代の要素も大胆に取り入れた「国風音楽」は、フレッシュなジャンルとなり、ますます多くの若者の間で人気を集めるようになっている。

2017年、女性アイドルグループ・SING女団が「電子国風」というジャンルを開拓して、「寄明月」や「如夢令」といった大ヒット曲が生まれた。「電子国風」は、ポップミュージックやロックンロール、リズム・アンド・ブルース(R&B)、スローミュージックなどのスタイルをベースに、民族的要素を加え、中国の伝統的な音楽の要素と、近代的でオシャレな特徴を兼ね備えた新たな音楽のジャンルとなっている。

「国風音楽」は当初、「クラシックな楽曲」と呼ばれるマニアックなジャンルで、琵琶や古筝といった民族楽器を使うのがその特徴だった。しかし、その後、ポップミュージックや民謡、ワールドミュージックといったジャンルの特徴の一部も取り入れ、そのスタイルやテーマは一層バラエティに富むようになった。古典の故事や神話などをテーマにしたり、西洋のアコースティックギターやドラム、エレクトリックベースと、中国の伝統楽器の大鼓や二胡、古筝などを、臨機応変に組み合わせたりして使用している。例えば、歌手・戴荃(ダイ・チュエン)の「悟空」は、ポップミュージックのメロディーに伝統演劇の節回しを組み合わせ、ピアノや二胡、ドラムといった中国と海外の楽器をコラボさせている。そしてクラシック、伝統、ポップカルチャーの要素が見事に一つになっている。このように「国風音楽」は全く新しいジャンルでありながら、伝統の「種」も人々の心にまいている。

音楽の垣根を超えた分野とのコラボも、「国風音楽」がポップで、包摂的であることを示している。例えば、「国風音楽」は映画・ドラマとコラボし、「凉凉」や「不可説」といった、大ヒット作品を生んでいる。また、オンラインゲームとコラボし、「琉璃月」や「浮生未歇」、「仙剣問情」、「月光」といった人気作品が生まれた。「国風音楽」の歌手は現在、各種アニメフェスティバルの「常連客」とさえなっている。(編集KN)

「人民網日本語版」2021年9月30日

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