筆者の調べた情報による、キャノンは70年代末に中国市場に進出、現在中国国内に五つの工場をもつ。2015年以降、世界経済が再び低迷を始めると、在中日系企業も大挙して撤退を始めた。キャノン中国撤退の噂も流れた。この敏感な問題についても前出のキャノン中国の広報関係者は正面から答えることはなかった。しかし、キャノン中国の小川一登執行副社長は昨年、「キャノンの五つの工場のいずれも中国から撤退することはない」と述べている。
キャノンは中国市場を堅守するも、デジタルカメラと複合機の二大支柱事業はいずれも成長に悩まされている。この二大事業への収益依存度は約90%で、全収益の80%が海外事業での売り上げであるため、中国等海外市場への依存度は非常に高い。キャノンが1月に発表した財務報告によると、キャノングループの2015年の純利益は前年比13.6%減の2202億1000万円で、市場予想を下回った。またキャノンは2016年の市場はより大きな困難を予想している。
「中国はスマートフォンの競争が世界一激しい市場であり、国内電子企業の進出と発展につれ、キャノンが得意とする複合機やプリンターといった市場は当然強敵を迎えることとなる。そのため、中国が再びキャノンの『溺れる者がつかむわら』となることは恐らくないだろう」。中国インターネット協会マーケティング専門委員の洪仕斌氏は語る。
コダックの二の舞となるか
キャノンはより利益を生み出す非カメラ事業を増やすべく経営の転換を模索してきた。昨年、キャノンは28億ドルを費やしスウェーデンのネットワークカメラ大手Axis社を買収、監視カメラ分野に乗り出した。
東芝医療の引き継ぎは踏み出さざるを得ない一歩だった。医療分野への進出が正しい選択だが、60億ドルという東芝医療の買収価格に疑問の目を向ける専門家は多い。高値で東芝医療を買収したところで、キャノンの転換に力強い原動力をもたらすとは限らないからだ。
技術的蓄積であろうと生産ラインであろうと、キャノンのカメラメーカーとしての中国での絶対的優位は短期的に揺るぐことはない。しかし、インターネットが普及する今日において、経営方式の転換は避けられない状況となっている。キャノンも中国市場での戦略を三・四級市場へと拡大し、天猫(Tmall)でも旗艦店を設け、オンラインとオフラインのマーケティング戦略を進めている。
一定規模の専門撮影業務とカメラ愛好家に身を任せ、高利益の一眼レフとレンズに頼れば、居心地の良い日々を続けられるかもしれないが、当時コダックは高利益のフィルム市場に満足して経営転換の機会を失っている。「転換を模索中のキャノンにとって選択肢は多いが、東芝やシャープといった他の老舗ブランドのように道を歩みかねない」と前出の洪氏は警鐘を鳴らした。(編集MI)
「人民網日本語版」2016年3月30日