易立監督は、「物語自体は非常にシンプルだが、映像には絶えずSFやホラー、アクション、暗黒などの要素が盛り込まれているため、制作には7年もの時間を要した」と語る。この7年の間に、文字による脚本だけで40回以上修正されてきた。最終的に、中国古代の神話「天女散花」をモチーフとしたごくシンプルな物語は、異なる8つの種族が共に邪悪な力と戦う「中国スーパーヒーロー連合軍」の戦いの物語へと変貌した。
■CGのクオリティに称賛が集まる
大げさでなく、「1万年以後」のCGの質は中国アニメ映画の中でもトップクラスと言える。物語やキャラクターはハリウッドの西洋の影響が見られるが、CG全体のクオリティはこれまでの他国のコピー映画のような中国国産アニメとは一線を画している。
ただし、世界観については、実のところクライマックスの戦闘シーンで、高いビルが古城の上に倒れ落ちるシーンでは、クリストファー・ノーラン監督作「インセプション」(2010)の圧迫感を彷彿させるほか、刀が観客に向かってくる3Dの視覚効果も既視感を覚えた。
映画以外にも売りはある。「1万年以後」の予告編は世界で初めてVR(バーチャルリアリティ)ヘルメットを媒体とした3D全方位パノラマで制作された。北京で行われたプレミア試写会では、会場で観客300人以上がVR3Dメガネをかけて、7000時間を使って作った3分間の予告を体験し、その不思議な感覚に口々に「なにこれ?」と大きな声をあげた。中国国産映画はこの瞬間からバーチャルリアリティの時代に突入した。
■これまでの国産映画では見られない暴力的な映像とキャラクター
映画の冒頭に登場する、神の遺跡を探索する人々が仕掛けられた罠で次々と殺されていくシーンは不意を突かれて驚愕させられるだけでなく、ハリウッド映画「ファイナル・デスティネーション」シリーズのように血なまぐさく暴力的だ。中国映画ではこういった暴力的な映像は非常に珍しく、現在はアニメ映画でしか用いられていない。