過激派組織「イスラム国」(IS)とみられる組織が1日インターネットに動画を公開し、「イスラム国」に拘束されていた日本人の後藤健二さんが首を切られて殺害された様子が映し出された。
同日公開した動画で安倍晋三首相を名指しし、「勝てもしない戦いに参加するというお前の無謀な決断のせいで、このナイフはケンジ(後藤さん)を殺すだけでなく、これからもどこであろうとお前の国民を見つければ皆殺しにする。さあ、日本の悪夢を始めよう」と脅迫した。
日本政府は動画に映る人物が後藤さんである可能性が高いという見解を示した。これで先月24日の湯川遥菜さんに続き、日本人の人質が二人とも殺害された可能性が高まった。
【後藤健二は何者?】
湯川遥菜さんと異なり、後藤さんは戦争に巻き込まれて逃げ場がない人々がいることをそれを知らない人々に伝える仕事をしてきた。
後藤さんは私立の名門・法政大学在学中から中東地域に関心を持っていた。中東諸国出身の人々と友人として付き合い、少しずつアラビア語を習っていった。1990年代から後藤さんは紛争地域の少年兵士など子どもの人権問題を取材し、これを改善しようと努力してきた。 番組制作会社を経て、1996年に映像通信会社「インデペンデント・プレス」を設立。海外の紛争地帯などを精力的に取材してきたが、関心の対象は戦闘そのものよりも紛争で苦しむ子供たちだった。取材活動の一方で、国連児童基金(ユニセフ)などの児童救護団体にも協力した。
後藤さんは紛争地域を取材して感じたジャーナリストとしての使命感については「そう、取材現場に涙はいらない。ただ、ありのままを克明に記録し、人の愚かさや醜さ、理不尽さ、悲哀、命の危機を伝えることが使命だ。でも、つらいものはつらい。胸が締め付けられる」(10年12月1日)、「取材現場での心持ちとしては(中略)答えを勝手に決めつけないこと。まず、当事者に聞いてみなくてはわからない。そして彼らの言葉で語ってもらう」(10年4月13日)とツイッターに書き残した。