――経済の合理的な成長を保つ。国内総生産(GDP)の成長率を7.5%前後とする。これは、改革の推進、構造調整の促進、民生改善への取り組み、リスク回避など、諸方面の要請や条件を十分に考慮した上で設定した目標である。一方で、経済の発展はわが国がなおも抱えているすべての問題の解決につながるカギであり、経済構造の調整や雇用の安定化と拡大、そして民生の改善・保障には、合理的な経済成長率が必要である。特に、さらなる貧困解消をはかり、小康社会を全面的に築き上げるという目標を達成するよう促すには、発展に頼ることがさらに必要となってくる。他方で、今年度は、経済成長の安定化にプラスとなる要因が少なからず備わっている。具体的には、改革の全面的な深化によって経済成長の原動力と活力がよりいっそう引き出されること、経済成長の安定化に向けた政策・措置の効果がますます顕在化してくること、消費や投資、外需はいずれもある程度の水準を確保されることが挙げられる。しかし、わが国はいま経済発展のパターン転換を加速する肝心な段階に入っており、産業の業態転換と高度化の任務がかなり重くなってくるため、経済成長率をあまり高く設定すべきではない。7.5%前後という経済成長率の予期目標は、弾力性をもった指導的目標であり、各地方政府は、経済成長率の目標値をそれぞれ地元の実情に即したうえで適切に設定すべきであり、数値をどんどん上乗せしたり、やみくもに競い合ったりしてはならない。
――経済発展の質・効率の向上と高度化を重んじる。現代サービス業の発展を加速させ、サービス業の付加価値のGDPに占めるウェートを引き続き高める。研究開発費のGDPに占める割合を引き上げて、在来産業の改良・高度化を加速させ、戦略的新興産業の健全な発展をはかる。新しいタイプの都市化を秩序立てて推進し、さらに調和のとれた地域間発展を目指す。エコ文明の建設は望ましい進展を見せて、GDP1単位あたりのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量をそれぞれ3.9%以上、4%削減する。また、二酸化硫黄(SO2)、化学的酸素要求量(COD) 、アンモニア性窒素の排出量をいずれも2%減らし、窒素酸化物(NOx)の排出量を5%削減するとともに、工業付加価値1万元当たりの水使用量を5.2%減らす。経済のパターン転換とグレードアップを加速させることは、われわれが直面している非常に困難で、差し迫った課題であるが、産業構造と資源環境を犠牲にしてまで経済成長率を求めるようなことを決してしてはならない。上述のような複合的な目標を設定するのは、各方面が産業構造の最適化、新しいタイプの都市化の推進、地域間のバランスのとれた発展の促進、エコ文明の建設強化のために力を結集するよう導くとともに、大きな構造的矛盾の解決に力を入れ、経済発展の質と効率を向上させるためである。
――物価の基本的安定を保つ。消費者物価の上昇幅を3.5%前後に抑える。この目標値の設定に当たっては、各方面における価格上昇の要因や人民大衆の許容限度だけでなく、改革の促進と構造調整のために一定の余地を残すことも考慮に入れた。一方で、現在わが国の総供給と総需要はほぼ均衡を保っており、食糧の収穫高が年々増え続け、ほとんどの製品の供給が十分になされていることから、物価総水準の基本的安定を保つうえで比較的良好な基盤と多くのプラス要因が備わっている。しかしその一方で、今年の物価は依然として、一定の上昇圧力にさらされており、昨年度の物価上昇要因のキャリーオーバー効果もあれば、新たな上昇要因もある。またそれと同時に、資源関連製品価格の改革を推進する必要もある。そのため、この目標を達成するには多大な努力を払う必要がある。
――民生の改善を優先させる。都市部における新規就業者数を1000万人以上とし、都市部登記失業率を4.6%以内に抑え、大都市における調査失業率を合理的な水準にとどめる。都市農村住民の所得・収入増加が経済成長にほぼ比例するようにする。社会保障体系をさらに完全なものにする。基本的公共サービスの均等化を引き続き促進する。人口の自然増加率を6.5‰以内に抑える。都市部の保障タイプ住居プロジェクトの住宅建設については、480万戸の住宅を一応完工させ、700万戸以上を新たに着工する。今年の都市部における新規就業者数の所期目標値を前年度比100万人増と設定するのは、主として都市部における新規増加労働力の就職に対する需要をよりよく満たすとともに、今年も大卒者数が増え続けることが原因で雇用の圧力が比較的大きくなるという現実に即応するためである。また、GDPの規模拡大とサービス業のさらなる発展にともない、経済成長率1ポイント当たりの創出する雇用が多くなることから、こうした目標を達成するための条件も備わっている。