鑑真和上の道をたどる若手研究者たち

中日青年「パイオニア」(二)

人民網日本語版 2022年11月30日11:17

夏のある日の夕方、東京都内のレストランで、数年前に参加した「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」を振り返り、中日関係という研究課題をめぐって会話する3人の姿があった。3人のうち1人は、同プロジェクトの発起人である在日華人・范云涛教授で、後の2人は、中国訪問団のメンバーになった経験がある学生、御器谷裕樹さんと郭拓人さんだ。人民網が報じた。

御器谷さんは、 「当時、中国の社会や政治にとても興味があったものの、中国語が話せなかったので、勉強するきっかけがほしいと思っていた。ちょうどそんな時に、先生に誘われて、『鑑真和上 中日学生交流プロジェクト』に参加した」とし、一方の郭さんは、「僕の父親は中国人、母親は日本人なので、ずっと中日関係に関心を寄せていた。大学に入ってから、中日友好の架け橋となるために、各種社会活動に積極的に参加するようになった。『鑑真和上 中日学生交流プロジェクト』があるのを知り、すぐに申し込んで、好運にも学生代表になれた」とした。

鑑真の足跡を訪ねたことがきっかけで中国問題を研究する道へ

慶応大学の博士課程に在籍中の御器谷さんと中国の縁は子供の頃にまで遡る。初めての海外旅行で両親に連れられて行ったのが、陝西省西安市だった。そしてその時、中国はとてもおもしろい国だと感じたという。2008年に北京五輪が開催されたことで、御器谷さんの中国に対する興味はさらに強まり、中学校に入学してすぐに、中国語を独学し始め、漢詩が好きになったという。

2015年、 范教授に誘われた御器谷さんは、「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」に参加し、日本の学生たちと共に中国へ行き、鑑真の足跡を訪ねたほか、中国の大学生と交流した。その中国訪問により、御器谷さんは中国についてより直観的に、深く理解するようになった。

人民網の取材に応える御器谷裕樹さん(撮影・呉穎)。

御器谷さんは、「それまでは、社会問題や経済問題を表面的に見ているだけで、一人ひとりの価値観などについては理解していなかった。しかし、中国の学生と交流したことで、中国に対する印象が大きく変わった。例えば、進学や就職など、両国の学生は同じ悩みを抱え、同じ問題に直面しているということが分かった。中国の学生と直接対話するというのは、とても貴重な経験で、大きな収穫があった」と振り返る。

「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」に参加した翌年、御器谷さんは北京大学に留学し、中国の歴史や国際関係を学ぶようになった。「プロジェクトに参加して6、7年経ったが、ずっと中国問題に関する研究を行っている。プロジェクトが僕と中国の縁を深めるとても良いきかっけとなった」と御器谷さん。

一方、中国で生まれた郭さんは、子供の頃に両親と共に日本にやってきて、その後日本に在住している。中日両国の文化の影響を受けて育った彼は大学卒業後、中日間の架け橋になることを志し、カナダや中国、英国などを訪問して、中国問題を研究し、関連する学位を取得。また、各種実践活動に積極的に参加し、非営利の医療・人道援助団体「国境なき医師団」として日本で活動しているほか、日本代表団のメンバーとして2019年の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議に参加したり、中日学生会議、日韓青年会議といった青年交流活動に参加したりしている。

2017年に「鑑真和上 中日学生交流プロジェクト」に参加した郭さんは、「参加した理由は、鑑真和上をとても尊敬していただけでなく、その歩んだ道は将来、中日関係を良い方向に向かって発展させるうえで、非常に有効だと思っているから」と語る。

そして、「プロジェクトに参加した時、中国の大学生と、将来どのように中日関係を改善するかについて語り合った時のことがとても印象に残っている。『日本と聞いて』、または『中国と聞いて』、誰を連想するかという質問に対して、中国の学生はアニメのキャラクターやアイドル、芸能人などを思いついたのに対して、日本のほとんどの学生は政治家の名前を挙げた。そのため、日本の青年や学生は多くの場合、政治という角度から中国を見ているのに対して、中国の青年や学生は多くの場合、文化という角度から日本を見ているのだと感じた」と振り返り、「両国関係を理解するうえで、片方の角度から問題を見るだけでなく、相手の角度からも中日関係を見るということが非常に重要だと思った。これが後に中国や英国に留学して中国問題を研究するきっかけになった」と語る。

中国の視点から中国を観察する研究者を目指して

御器谷さんは、「中国に留学するまでずっと日本で暮らしていたので、日本の視点から中国を理解していた。しかし、中国に行ってからは、実際にそこに身を置き、じっくり観察し、今までにない視点から見ることができ、今までにないことを感じることができ、大きな収穫を得た。そのような観察や中国の学生と直接交流することで、中国ではいろんな人が生活していて、多種多様な主体が存在し、経済や政治にもいろんな角度があり、偏った見方をせずに、全体像を見るようにしなければならないと考えるようになった」と語る。

そのため、御器谷さんの中国に対する関心は、古代文化から現代社会へと、経済問題から政治問題へと少しずつ広がっていった。そして、大学卒業後、修士課程、博士課程へと進学し、中国問題の研究に専念する道を歩んだ。

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