新型コロナウイルスによる肺炎が拡大して以来、各種の医療用防護用品が深刻な供給不足に陥った。最近は、中国国内の複数の自動車メーカーが「生産を転換して感染に対抗する」と発表。いつも切れ目なく稼働しているロボットの生産ラインで、現在生産されているのは自動車ではなく、感染対策で最も必要とされるマスク、消毒液などの医療用品だ。人民網が伝えた。
比亜迪が業界の枠を超えてマスク生産 2月末に日産500万枚の見込み
比亜迪(BYD)は2月8日、「資源を調達・配置して、防護用物資・設備の設計と製造に着した」と発表した。比亜迪自動車販売有限公司の李雲飛副社長は、「比亜迪自身は実体ある製造業だ。ここ数日で、設計と生産ラインの設置を迅速に完了し、2月17日にはマスクの大量生産が始まり、2月末に生産能力は1日あたり500万枚に達する見込みだ」と述べた。
また比亜迪傘下の汕尾比亜迪実業有限公司もこのほど消毒液製品の開発、生産、販売などの業務を新たに手がけるようになり、親会社と同じく17日頃に量産化と出荷を開始し、生産能力は1日5万本に達する見込みという。
上汽通用五菱汽車は生産ラインを改造してマスク生産に転換 広州汽車も転換を予定
比亜迪が生産転換を発表した同じ日に、上汽通用五菱汽車がサプライヤーと共同で生産したマスク第1弾20万枚が順調にラインオフした。同社の沈雲嘯副社長は、「マスクへの生産転換プロジェクトはすでに急速な実施段階へ全面的に入っている。サプライヤーの既存の生産ラインはすべて改造されていち早くマスクの生産を開始した。今の段階では、一般的な場面で使用される民間用マスクを主に生産している。2月末までにクリーンルームが完成すれば、専門的な用途の医療用マスクを量産できる」と述べた。
マスク生産現場の設備の一部(写真は取材対象者が提供)。
また広州汽車集団の党委員会書記を務める曽慶洪会長はこのほど東莞市のマスク生産設備メーカー・東莞快裕達自動化設備有限公司を視察し、マスク生産設備の製造、組立、調整の技術を学び、マスク生産ラインの新たな建設に向けた技術面の実行可能性を検討して、マスクの加工生産用の設備と生産ラインのプランを作成する。現在、同社はすでに関連従業員の育成を始めた。
マスク生産と大きくかけ離れる自動車メーカー、実行可能か
業界の枠を超えたマスク生産において、自動車メーカーには他の企業に比べて大きな優位性がある。李氏は、「自動車生産の4大技術であるプレス、溶接、塗装、組立の中で、塗装の現場には防塵対策の面で高い基準が設けられている。医療用マスクの生産過程では、生産環境に対する特殊な要求があり、温度と湿度を一定に保つとともに、塵埃などの微小物質がマスクを汚染しないようにする必要がある。従業員は除塵加工をしたつなぎを着用し、自動ドア付きエアシャワーを浴びなければ除塵対策がなされた生産現場には入れない。つなぎは除塵性能と塵埃発生量を保証しなければならず、定期的な除塵加工と洗浄を行って、帯電防止性能も保証しなければならない。こうした生産設備や生産プロセスは、自動車メーカーの生産拠点における『塗装の現場』に非常によく似ている」と述べた。
マスク生産現場で、作業員が生産に従事する様子(写真は取材対象者が提供)。
工業・情報化部(省)がこのほど発表したデータによれば、中国のマスク生産量は1日あたり約2千万枚で、自動車メーカーが業界の枠を超えて生産支援に乗り出せば、比亜迪と上汽通用五菱の2社だけでさらに1日あたり670万枚を上乗せすることになり、さらに広汽集団なども加われば、マスクをはじめとする医療用物資の不足状態は早いうちに緩和される見込みだという。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年2月12日