もちろん安倍首相本人も「アベノミクス」がマイナス効果を持っていることをわきまえている。8日に発表した総裁選挙に向けた政策見解では、デフレ脱却のために政権運営では経済を再優先に考えるとの態度を強調した。自民党の谷垣禎一幹事長も安倍首相に対し、安保法案の通過後は内閣の仕事の重心を経済政策に置くことを提案している。だが日本経済にはマイナス要因が蓄積しており、景気を根底から回復して経済の急成長を実現するためには、「アベノミクス」にはこれからも多くの課題に直面することになる。
また重要な外交と安全保障は今後3年、安倍首相の政権運営能力を試す大きな問題となる。安倍首相が強力に推し進める安保法案は27日の国会会期末までに、安倍首相と連立与党の働きかけの下で通過することが予想される。だがそれに続く問題となるのは、安保法案が通過した後の安倍内閣が、日中関係や日韓関係、日露関係、さらには集団的自衛権行使での米国との連携など、取り扱いの難しい一連の外交問題にいかに対応していくかということになる。第2次安倍内閣は発足以来、非常に敏感な第2次大戦における侵略の歴史の問題で、被害国と国民を刺激し傷つける言動を繰り返し、歴史修正主義への道を転がり続けている。日本と隣国との関係はこれによって冷え込み、日本と中露韓などの隣国が同時に外交的な行き詰まりに陥るという珍しい事態が出現している。この結果は当然、安倍内閣が自ら作り出したものである。再び3年の任期を手にした安倍首相がこうした一連の外交の難題をいかに処理するかは、今後3年の政権の安定を占う試金石となる。
外交と安全保障について安倍首相が直面しているのは、安保法案通過後に日本が、米国と連携して集団的自衛権を大幅に行使すると同時に、日中関係や日韓関係、日露関係において有効な戦略的発展を実現しなければならないという複雑な局面である。両者に矛盾はないのか。集団的自衛権の行使と日米同盟、隣国との外交の行き詰まりの解決、これらは一つ一つがつながった鎖のような問題で、単独で考えたり、ほかと無関係に処理したりはできない問題である。日米同盟で連携しながら集団的自衛権行使の目的を果たそうとすれば、集団的自衛権の拡大による日本と隣国との関係悪化を招くのは必至だ。
日本国内では安保法案に抗議する民衆がますます増えている。もしこれがさらに拡大すれば、安保法案は諸刃の剣となり、隣国に脅威を与えると同時に、安倍首相と連立与党と多くの日本国民との関係を断絶するものとなり得る。より多くの日本国民が安保法案に反対するようになれば、今後3年で、安倍首相の政治的なセールスポイントであった安保政策は、長期政権実現という安倍首相のねらいを阻む要素となる可能性もある。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所副研究員)(編集MA)
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「人民網日本語版」2015年9月14日