北京市内に、日本人パティシエが営む洋菓子店がある。ロールケーキを看板商品に、中国人を中心に近年人気を集めている。今回はこの洋菓子店「Booth's cake」のオーナーシェフ、森田峻亮さんをご紹介したい。
かつて日本でケーキとは無縁のプログラマーの職に従事していた森田さんだが、「自分が本当にやりたい仕事は何か」を考え、辿り着いたのが学生時代から憧れていたパティシエの道だった。大手百貨店にも店を出す地元大阪の洋菓子店のパティシエへと転職し、その後上海の支店に駐在員として派遣され修行を積んだ。当時「中国のお客さんが日本のケーキに新鮮さを抱いてくれることが面白い」と感じるようになり、中国で独立して出店してみたいという気持ちが沸いてきたという。
森田さんのお店の看板商品はロールケーキだ。それまで北京でロールケーキを耳にすることすら稀だったが、開店から3年経つ今では、北京で暮らす日本人のみならず多くの中国人ファンをもつほどの人気店となっている。売れる秘訣は選び抜かれた生クリームにある。「生クリームといっても種類は多様。ケーキ文化が浸透している日本と同じ条件とはいかないが、それでも各国から北京に取り寄せられる生クリームをすべて取り寄せ、その中で私が一番美味しいと思ったものを今使っている」とそのこだわりぶりを語る。
それだけこだわり抜いて作ったケーキでも、開店当初から地元市民に受け入れられていたわけではない。ケーキに馴染みの薄い中国人にとって、森田さんの作るロールケーキは、「クリームが多すぎて食べる気がしない」「気持ち悪い」と、「見た目」の時点で不評だった。しかし、「日本人が作ったケーキ」はその後ネット上の口コミで少しずつ評価を上げ、中国の著名人などがわざわざ訪れて絶賛したことなどをきっかけに一気にファンを増やした。今では中国人客を中心に連日盛況をみせ、昨年市内中心部に2号店もオープンさせている。