アジアインフラ投資銀行(AIIB)が国際的に大きな話題となっている中、ルー財務長官が訪中した。中国側との会談ではAIIBが避けられない話題になると考えるのが自然だ。国際世論からすると、現在米国がAIIB問題で若干孤立し、守勢に立っているのは明らかだ。(文:華益文・国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
AIIBの話題がこれほど大きく取り上げられている大きな原因は、米国の立場と姿勢にある。中国側がAIIBの設立を打ち出した当初、米側はそれほど真に受けていなかった可能性がある。AIIBが具体的な準備段階に入り、いくつかの国が参加意志を表明するにいたって、米側は姿勢を明らかにし始めた。米側の公の姿勢は、AIIBが透明性、環境、労働基準などの面で「高い水準」を備えるか否かへの懸念を表明するというものだ。これは米政府報道官や高官の思いつきではなく、各当局の調整の結果であり、上層部でトーンを定めたものだ。このため高官からホワイトハウス、国務省報道官まで異口同音で、言葉遣いまで驚くほど似ている。こうした「高い水準」「厳しい要求」は、AIIBに疑問を呈するものだ。
もちろん、米側はAIIB設立に公然と、明確に反対を表明したことはない。だが報道が続々と明かしたところによると、米側は中国に助勢しないよう水面下で同盟国に働きかけていた。米側はこれについて、AIIBに参加するかどうかはその国の主権であり、米側は自らの懸念を分かち合っただけだと答えた。米側はそれほど直接的に「参加するな」とは言わなかったのかも知れないが、日韓豪など同盟国の最初の姿勢から見て、米側の意思が「参加するな」であったことは明らかだ。
米国と「特別な関係」にある英国が「敵に寝返った」ことで、ドミノ効果が引き起こされた。台頭する中国への英国の「譲歩」を米側は批判した。予想外なことに、AIIBに対する今回の米国のやり方は国際世論から評価されるどころか、米国内外からほぼ一様に批判された。筆者がこの間に会った米国の高官、元政界要人、学者も大部分が批判的姿勢であり、少なくともAIIB問題の処理において米政府は「やり方」を間違えたと考えていた。米側の懸念は本物だが、たとえ参加しなくとも足を引っ張るべきではないというのが言外の意味だ。