ウォン・カーウァイ監督の新作、好調発進 ネット上に賛否両論
「ブエノスアイレス」(97)「花様年華」(01)などで知られるウォン・カーウァイ(王家衛)監督が構想から17年もの歳月をかけて完成させた新作「一代宗師」(グランドマスター(仮))が8日、中国全国で公開された。中国のネット上ではこのほど、同映画をめぐる議論が盛り上がっている。
■滑り出しは好調 1週目の興行成績は18億7千万円
中国紙「中国電影報」によると、中国国内の1週目の興行成績は、正月明けからの8日間連続勤務や有害物質を含んだ濃霧などマイナス影響があったにもかかわらず、1億6200万元(約18億7000万円)を売り上げ、中国大陸部で公開されたウォン・カーウァイ監督の過去4作品「花様年華」(00)、「2046」(04)、「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(07)、「楽園の瑕 終極版」(09)の合計を1週間で大きく上回った。これまでウォン監督の作品は独特な世界観が敬遠され大陸部では成績が振るわなかったが、今回は「狙った恋の落とし方」などで知られ「興行不敗」の神話を持つフォン・シァオガン(馮小剛)監督の「1942」に並ぶ勢いだ。
■17年越しで完成 一時は「一代失踪」との声も
「一代宗師」は、今なお世界中の人々を魅了する伝説のアクションスター、ブルース・リー(李小龍)の師匠だった「詠春拳」の中国武術家イップ・マン(葉問)の知られざる物語を描いている。
トニー・レオン(梁朝偉)やチャン・ツイィー(章子怡)、チャン・チェン(張震)、ソン・ヘギョ(宋慧教)など中韓両国を代表するスターが出演していることや、役作りのために3年前から中国武術・八極拳を練習してきたチャン・チェンが昨年11月に中国で行われた武術大会で優勝したニュースも最近話題となっていた。だがそれ以上に独特の撮影スタイルと完璧主義のため撮影が非常に遅いことで有名なウォン監督の新作がいったいいつ完成し上映されるのか、それよりも本当に完成するのか、などその行方自体が映画ファンの熱い注目を浴び、ネットユーザーの間では「一代失踪」とも称されていた。
中国では近年、このイップ・マンを描いたウィルソン・イップ(葉偉信)監督、ドニー・イェン(甄子丹)主演の「イップ・マン 序章」(葉問)(08)や「イップ・マン」(葉問2)(10)が大ヒットとなり、その後、一大イップマン映画ブームを引き起こした。しかし実はそれよりもはるか以前にイップ・マンの映画を企画していたのがウォン・カーウァイだった。中国拳法界の勢力図を再現するための調査に6年、100人を超える拳法の達人を訪ね歩くのに3年、クランクインして3年など、構想から完成までに17年を費やした。その間に次々と他企画に先を越されてしまった。
ウォン・カーウァイ監督はこれまでも新作を出すたびに映画の評価について激しい議論を巻き起こしてきたが、特に「楽園の瑕」(94)(東邪西毒) の際には北京大学の専門研究家による特別会議が催され何時間もかけて称賛派と否定派が討論を行ったが、決着がつかなかったというエピソードが残されている。