新しいメンバーと会話を楽しむ佐々木さん |
―――――中国人のメンバーはどういう動機で「北京漫画研究会」に参加してくれているんですか?
中国人が漫画・アニメ研究会に参加する動機は、だいたいが日本のオタクと交流したいというものです。3000万人もいる北京で、1万人しかいない日本人と出会える場所や機会はなかなかありませんし、そういう中国人の方はアニメ・漫画だけでなくて、そもそも日本の文化を好きな方が多いです。アニメを通して、例えば東京だったり、大阪だったり、生活スタイルだったり、日本に関する様々な知識を得ています。漫画を通して、日本人はこういう風に考えるのかとか、東京ってこういうところなんだとかを理解しています。アニメとか漫画が好きな中国人ほど、日本に対して好感をもってくれています。
今に始まった話ではないですが、現在日中関係は良くないですよね。特に昨年の釣魚島(日本名:尖閣諸島)を国有化してからはさらに。でも、漫研に来てくれる中国人は日本文化が好きで尊重してくれているので、政治的な問題も切り離して考えてくれています。そういう意味では、こういう小さな活動も日中交流の一つになるのかなと思っています。
■アニメ・漫画には国境がない。初対面同志でも共通の話題で一気に距離が近くなる
―――――最初は中国の友人を作りたいという個人的な思いから作った「北京漫画研究会」が日中交流の一つの場として考えるようになったのはいつからなんですか?
確かに最初は、僕個人と中国人の関係を築きたくて立ち上げた漫研でしたが、それが徐々に中国人と日本人が交流できるコミュニティの場にしたいという思いに変わってきたのは、実は最初のオフ会がきっかけでした。初めてのオフ会を開催したのは、2012年3月でした。その時のメンバーは学生と駐在員が半々ぐらいで、全部で10、11人ぐらい。そのうち、中国人は、3、4人ぐらいいました。
僕自身はメンバー全員を知っていますが、自分以外の人たちはその日初めて会うことになるので、正直盛り上がるか少し心配でした。最初はやはり軽く話すぐらいで、あぁやっぱり盛り上がらないかなと思っていたところ、30分ぐらい経過したら、みんなどんどん話が盛り上がっていって、もともと2時間の予定が、3時間ぐらい話し続けていました。話題も、アニメ・漫画だけでなくて、ネットゲーム、オンラインゲーム、ボーカルロイド、カラオケなど自分が全然知らないことも含めて、多岐に渡っていました。
この時に、初対面同士でも、共通の趣味を持っていると、こんなにも簡単に盛り上がることができるんだなと感動しました。しかも、初対面というだけでなく、文化や育った背景も異なる日本人と中国人が、共通の話題でこんなにも盛り上がることができるなんて、凄いことだと感じました。最初は個人の暇つぶしぐらいの勢いだったのが、もう最初のオフ会で衝撃を受けて、今後もこのサークルをちゃんと続けていこう、みんなに楽しんでもらいたいという思いに変わりました。
―――――知らない人同士が好きな話題で盛り上がって仲良くなれるのは、外国では確かに貴重な体験ですね。
アニメ・漫画というのは、細分化されたジャンルを超えて、仲良くなれるところがいいところだと思います。そこがスポーツとは少し違います。実は、前回のオフ会には、PRTGサークル(ボードゲーム上のロールプレイングゲームをするサークル)の方にも、大きく分ければ同ジャンルで仲間だという意識で誘ってみたら、気軽にオフ会に参加してくれて、一緒に盛り上がることができました。こういうオタク文化というのは枠とか対抗心みたいなものがないところが、すごくいいなと実感しました。