米国をまねて「東南アジア回帰」を図る日本
日本の安倍晋三首相が16日から東南アジアのベトナム、タイ、インドネシアを訪問する。これに先立ち岸田文雄外相は先日フィリピン、シンガポール、ブルネイ、オーストラリアを訪問した。
日本の指導者によるASEAN諸国への集中的訪問には政治、経済両レベルでの考慮がある。政治レベルでは日本はかねてより米国に追随しており、ASEAN諸国への頻繁な訪問の目的の1つは米国の「アジア回帰」戦略と足並みを揃えるためだ。日本は東中国海と南中国海の問題で対中歩調を揃えるようASEANを抱き込み、将来のアジア太平洋の政治・安全保障構造の構築において有利な地位に就くことも望んでいる。経済レベルでは安倍氏は首相に返り咲くや日本経済の振興を急いでおり、世界で最も経済的活力のある地域の1つである東南アジアが日本経済の成長牽引に対して持つ重要性は言を俟たない。
■外相訪問は完全に思い通りとはいかず
岸田外相は先日の東南アジア歴訪の際、行く先々で中国に言及した。10日のフィリピン外相との会談では海上安全保障分野の協力強化で一致。日本は中国牽制のためにフィリピンとの協力関係の深化を極力図っている。11日のシンガポール外相との会談では釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題と南中国海情勢について意見交換した。12日のブルネイ外交貿易相との会談では中国への対応が双方共通の課題だと主張した。共同通信は15日、日本は岸田外相の今回の外遊によって対中包囲網を構築することを望んだが、思い通りにはいかなかったと報じた。シンガポールとブルネイは釣魚島問題に冷静に対応し、中国と良好な関係を維持することを日本側に望んだ。オーストラリア外相も「日本との関係の深化は豪中、日中関係の強化と矛盾しない」との認識を示した。ASEAN各国とオーストラリアは中国経済の影響を大きく受けており、アジアの両大国の対立を懸念しているというのが現在の実情だ。
日本の毎日新聞は「安倍外交の雛型はすでにできている。日米同盟を安倍外交の支柱の1つとするなら、インド、ASEAN諸国、オーストラリアとの協力強化はもう1つの支柱だ」と分析した。
シンガポール国立大学アジアとグローバル化研究所の趙洪シニアフェローは本紙(人民日報)の取材に「日本と東南アジアの一部の国は中国と領土紛争を抱えており、双方共に中国を牽制し均衡を図ることを必要としている」と指摘。一方、同大東アジア研究所の鄭永年所長は「ASEAN諸国は経済面で中国への依存が深く、日本が『中国を包囲』することはできない。中国を牽制し均衡を図ることについて、日本は『心はやれど力及ばず』だ」と指摘した。
シンガポール国立大学アジアとグローバル研究所の黄靖所長も本紙の取材に「安倍氏の東南アジア訪問は実はやむを得ない選択だ。米国は安倍氏の民族主義的傾向に気づいたため、受け入れを望まなかった。米国は東南アジアで中国に対抗する能力がないことをすでに意識している。したがって中国と領土紛争を抱える東南アジア諸国と結託して中国を牽制し均衡を図ろうとする日本の企ては東南アジア地域の安定を破壊し、米国にトラブルをもたらすだけだ」と述べた。
周辺国との係争が頻発し、政治の右傾化が日増しに顕著になる最近の日本の危険な趨勢をいくつかのメディアは問題視している。ジャカルタ・ポスト紙は先日の論説で「安倍氏は憲法改正と軍事力の発展について論じている。これらの兆しはいずれも、右翼分子、さらには極端な民族主義の政客が日本の政局を支配して、軍国主義が息を吹き返すことへの懸念を抱かせるものだ。もし安倍政権が軍事力を誇示して植民の歴史を弁護すれば、国際社会で一層孤立するだけだ」と指摘した。