ある中国の歴史学者は同書を読んだ後、「この373ページにも及ぶ本のうち、95ページは南京の日本軍がいかに中国人女性を陵辱したかを記録している。その部分については、今でも開く勇気がない。私は日本の極端な右翼が宣伝している、南京大虐殺は嘘という説が真実であればと強く思っている。わが国、わが国民はなぜ、この名状しがたい惨劇に耐えなければならなかったのか」と心の声を漏らした。
同書のより重要な意義は、戦争を経験したことのない多くの日本人が、南京でかつて起きたことを初めて知ったことにある。数え切れないほど多くの日本人が、衝撃と黙考の中に浸っている。
松岡さんの信念に感化され、ある日本の元兵士が2007年に彼女と共に南京を訪れた。彼は中国人から責められるのではと懸念していたが、実際にはそんなことはなかった。南京を訪れた彼に対して、多くの大学生は勇気あると言い、彼を取り囲み握手した。この老人は、「平和はすばらしい」と語った。
◆右翼からの攻撃も日常茶飯事
松岡さんは南京大虐殺の問題で、自らの観点を貫いている。この歴史と正義を守る女性学者は、日本の一部の過激分子によって「反日」のレッテルを貼られ、右翼の攻撃の対象になっている。彼らは松岡さんの仕事先や集会場で公然と騒ぎを起こしており、ネット上での攻撃も日常茶飯事となっている。さらには、松岡さんが中国人から金をもらっていると貶める内容もある。「私の仕事は、特に歴史修正主義者によって誹謗中傷され、侮辱を受けている」
「南京 引き裂かれた記憶」が日本で公開された際に、週刊新潮は記事の見出しに、右翼団体が松岡さんにつけた「反日」という罪名を使った。右翼団体・一水会の鈴木邦男代表は、「この映画について聞いた時に、命知らずかと思った」と語った。試写会の来場者とゲストはさらに脅迫電話を受けた。初公開当日、警察署は警官を映画館に派遣し、警戒に当たらせた。同作品のもう一人の監督である武田和倫氏は、「抗議活動を先に目にすると思ったら、先に目にしたのは警察だった」と複雑な心境を明かした。