松岡さんは1997年10月に6都市で、「南京大虐殺ホットライン」を3日連続で開設し、電話で情報を収集した。その結果、ついに13人の元兵士から、南京大虐殺の資料を得ることができた。松岡さんは電話で得た資料を踏まえ、地方の図書館の戦争の記録、各連隊・中隊の戦友会の名簿を調べ、旧日本軍の元兵士を探し始めた。元兵士の自宅を訪問し、「南京のことについて質問したいのですが」と言うと、老人たちは口を閉ざした。そこで松岡さんは戦争の苦しみから質問を始め、大阪や京都などの元兵士の家を一軒一軒訪問した。
奥山みどり記者は同作品の鑑賞後、「南京大虐殺について、(日本の)ある人は否定的な論調を展開している。しかし取材に応じた元兵士は、これらのすべてが起きたことであり、口にしようがしまいが、確かに(大虐殺が)存在したことを証明した。男性ならば銃殺し、女性ならば老若を問わず強姦した。これは天子様の赤子と呼ばれる、日本兵のイメージだ。これらの証言は常に私たちの胸に突き刺さっている。証言は歴史の真相の扉だけでなく、人の心の扉を叩いている」と指摘した。
◆驚くべき内容の著書
あの痛ましい歴史の研究について、同作品は松岡さんの唯一の成果ではない。松岡さんは2002年に、8月15日という特殊な記念日を選び、南京大虐殺の証言集「南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて―元兵士102人の証言」を刊行した。
同書は102人の元兵士の証言を通じ、南京大虐殺の経緯を記録しており、その文字と写真は衝撃的な内容となっている。そのうちの一部は、松岡さんが1999年に、85歳の元兵士の佐藤睦郎さんに対して実施したインタビューだ。佐藤さんは当時を振り返り、「(私たちは)九二式重機関銃で、対岸に逃げる数千人の人々を撃った」と語った。佐藤さんは旧陸軍第16師団歩兵第33連隊第1機関中隊の兵士で、南京侵攻に参加した。「揚子江のほとりで、私たちは数千人の川辺の人々を包囲した。ある中隊の8挺の重機関銃が、密集した人々に向かい火を吹いた。(私たちは)角度を変えて掃射し、命中した場所では人の壁が崩れた。彼らは必死に白旗を振り、私たちも哀れだと思った。私たちは小隊長の命令に従ってやったが、この命令(中国人を皆殺しにする命令)は師団から出されていたはずだ」