アン・リー監督 数々の映画賞受賞の栄光 (2)
■自らに高いハードルを課し、挑戦し続ける映画の開拓者
しかし、興業成績や数々の映画賞受賞よりも、驚かされるのはアン・リー監督の手掛けてきた映画ジャンルの幅広さに加え、アン・リー監督が毎回自らに課す新たな「挑戦」への姿勢だ。通常の外国人監督ならしり込みするような、米国の真髄ともいえる文化や歴史をテーマにした映画にも果敢に挑戦するなど、毎回、越えられないような高いハードルを自らに課し、それを克服していく姿はどこか修行僧を彷彿させる。
「父の愛3部作」と称される「推手」(91)、「ウェディング・バンケット」(93)、「恋人たちの食卓」(94)で、中国人の父親をテーマに家族のあり方を描いた後、「いつか晴れた日に」(95)でイギリス人女流小説家、ジェーン・オースティンの「分別と多感」を原作に映画化を手掛け、正式にハリウッドデビューする。その後、今なおアメリカ人の深い心の傷となっている南北戦争を描いた「翼をください」(99)では、あえて米国では主流ではない南部の視点から作品を描き、「グリーン・デスティ二ー」(00)では、中国の古典を題材にした本格的ワイヤーアクション作品を手掛けハリウッドにワイヤーアクションブームを引き起こす。しかし、実際に映画で描き出しのは「欲望」という人間の本能だった。アカデミー賞作品賞を受賞した「ブロークバック・マウンテン」(05)ではアメリカ中西部を舞台に、羊を遊牧する季節労働者の男性2人が互いに惹かれ合う心の有り様を「正当派ラブストーリー」として丁寧に描き高い評価を得た。また、「ラスト・コーション」(08)では、1人の愛国者である革命家の裏切りを描き、中国の愛国者の不安と憤怒を掻き立てた。そして、新作「ライフ・オブ・パイ トラ」(12)では、世界的な文学賞のブッカー賞に輝いたヤン・マーテルのベストセラー小説を初の3Dを駆使して映画化に実現。特にこの企画は「この小説の映画化は無理だろう」と自問自答しながらの撮影だったという。
このように、アン・リー監督に一貫しているのは、巨大勢力や偏見、不可能と思われるような大きな壁に立ち向かう勇気と姿勢である。(編集MZ)
「人民網日本語版」2013年2月18日