中国で上映中の日本のミステリー映画「祈りの幕が下りる時」は、興行収入も評判も上々だ。東野圭吾の同名小説が原作で、同じく東野作品原作のミステリー映画「マスカレードホテル」も中国での封切がり間近に迫る。こうして、日本で最も人気があり、パワーもあるミステリー映画という商業映画のジャンルが、中国の観客にも徐々に受け入れられていることがわかる。(文:劉起・映画学博士、中国文聯映画芸術センター理論研究処に所属。「文匯報」に掲載)
ミステリーはさまざまな映画のジャンルがある中、日本以外の国ではそれほど発展していない。日本での成功体験にはある種の独自性があり、複製は不可能だ。それでは日本はどうやってこの不人気ジャンルの弱みを強みに転換し、世界的にも例を見ない成功を収めたのだろうか。
▽日本のミステリージャンルの隆盛——小説、映画、アニメ・ドラマがメディアミックスで協力
映画のさまざまなジャンルが最も成熟した発展を遂げる米国でも、ミステリー映画はこれまでずっと人気ジャンルではなかった。韓国は従来からさまざまなジャンルの発展を積極的に模索し、ハリウッド映画の経験を全面的に学んだだけでなく、韓国独自のジャンルにもいろいろチャレンジしてきた。しかしジャンルを映画工業の基礎ととらえる韓国では、ミステリー映画へのチャレンジはほとんど行われず、犯罪映画、アクション映画、サスペンス映画が主流だった。ミステリー小説が生まれた英国でも、ある時期にミステリー映画が制作されたものの数はそれほど多くなかった。
これはミステリーの世界をスクリーンに描き出すのが難しいことに原因がある。論理性が高く、ストーリーが複雑で、テンポも遅く、視覚的に弱いことから、ミステリーというジャンルは現代の観客の目には古くさいものに映る。ビジュアル効果が主導する現代の商業映画界で、ミステリーの世界を表現することは確かに難しい。
ミステリーというジャンルが衰退傾向にある現代の商業映画界において、日本でのみ発展し、強いジャンルになったことは、研究に値する現象だといえる。
日本のミステリー映画が安定的に発展を続けているのは、日本のミステリー文化の隆盛によるところが大きい。これは主にミステリー小説の流行によるものだ。日本のミステリーには本格派、変格派、社会派など多くの流派があり、優れた作者と作品が数多く生まれ、長い時間をかけて日本独自のミステリー文化を徐々に形成してきた。ミステリーというジャンルは日本の大衆文化を構成する最も重要な要素だといえる。
ミステリー小説の全面的な発展により、テレビドラマ、映画、アニメ、漫画などの分野でミステリー作品が生まれ、メディアミックスの協力が進み、ミステリーは日本によりしっかりと根を下ろし、整った作品-商品チェーン、すなわち小説-ドラマ-映画と作品が広がっていくチェーンを形成した。ベストセラーになったミステリー小説でなければ映画化されない。日本のドラマ界ではミステリーと医療ドラマが2大人気ジャンルで、何シーズンも放送され社会現象になった人気ドラマもたくさんある。「古畑任三郎」、「踊る大捜査線」、「相棒」などだ。高い視聴率を稼ぐミステリードラマは、第2シーズンが制作されたり、映画になったりする。