わずか5ヶ月の間に、米ボーイング社の小型ジェット旅客機737 MAX 8は2度の墜落事故を起こし、それぞれ189人と157人が犠牲となった。これは、人類にとっての悲劇といえる。大まかな統計ながら、現在、数十ヶ国・地域が737 MAX 8の運航を停止している。最新情報によると、米国も全てのボーイング737MAX機の運航を停止した。これは人命に関わる非常に重大なことで、人の命をおろそかにしてはならず、国民の安全を決して軽視してはならない。
ボーイング社はこのほど、「当社にとって、安全は最大重要事項で、737 MAXの安全性に対しては絶対的な自信を持っている」との声明を出した。しかし、「自信」というのは「宣伝文句」であってはならず、安全は、机上の空論であっては決してならない。しっかりとした証拠もないのに「安全」をうたうなら、「安全」や「自信」は、絵に描いた餅になってしまう。そうであれば、自分で自分を欺き、利用者を愚弄し、命を軽々しく扱っていることになる。
最も基本的な人道的な観点、最も基本的な企業倫理から考えても、ボーイング社は反省すべきで、はっきりとしたことは言わずに、その場をごまかしたり、根拠のない「自信論」を伝えたりしては決してならない。「監督機関や利用者は自国の市場にとって最善と信じる判断を行っていることは分かっている。当社は、今後も監督機関や利用者と意思の疎通を図り、彼らに必要な情報を確保し、737 MAX 8の運営に対して自信を持つことができるようサポートする」としたボーイング社のこのような声明から、命への畏敬の念は感じられず、逆に冷淡さ、ごう慢さを感じ、うぬぼれてしまっていると言わざるを得ない。
「大企業ほど知恵がある」とよく言われるが、大企業にはより一層大きな責任が課せられていると言える。世界最大の旅客機メーカーであるボーイング社は、大型旅客機の製造や販売といった面で、輝かしい業績を誇っている。中でも、737型ファミリーは人気旅客機で、737 MAXシリーズは、世界中から多くのオーダーを受けている。ごく普通の常識からして、飛行の安全、人の命というのは、他の何よりも重要なことだ。2度の墜落事故には、その機種が737 MAX 8で、離陸直後に墜落したなど、たくさんの共通点が見られ、同型機には致命的な設計ミスがあるのではないかとの懸念が広がっている。真相がどうであれ、墜落事故が2度も起こったのは事実であり、ボーイング社は勇気を持って、世界中の声に耳を傾けるべきで、そうする責任があるはずだ。しかし、事故後の一連の動きを見る限り、ボーイング社は、人々が納得する対応ができていないと言わざるを得ない。
ボーイング社の対応を見ると、損得を考えてそろばんをはじいているのではないかと強く感じてしまう。ボーイング社の2018年度の業績報告を見ると、売上高は1011億ドル(1ドルは約111.9円)で、純利益は前年比19%増の104億6000万ドルだった。主力4部門のうち、商用機の売上高が全体の60%も占めている。専門家によると、世界で主流となっている737 MAX型機は、ボーイング製の旅客機のうち、注文数が最も多い旅客機の一つだ。これこそが、事故発生後もボーイング社があいまいな態度をとっている理由の一つだろう。実際には、ビジネス的観点から損得のそろばんをはじくというのは、企業にとってはごく当然のことだろう。しかし、「人の命」を脇にやって、そろばんをはじき、それが悪巧みとなっては決してならない。世界一流の実力を誇る企業であっても、反省する心を持っていないのであれば、尊敬に値せず、命を軽視するのであれば、世界からさげすまされてしまうだろう。
中国が世界で先頭を切ってボーイング737MAX8機の運航停止を決めたことは注目に値する。停止決定発表当初は、それを批判する声もあったものの、事実は、中国の決定は正しいことを示しており、命を重視していることの表れで、それは大国の責任でもある。その後、多くの国が運航停止の列に加わり、それは、ボーイング737 Maxシリーズの安全性に確かに懸念があることを側面から示している。
ボーイング社がこの事態をどう収束させるのかは今のところまだ分からない。現在、株価を大きく下げているほか、ボーイング社は、賠償請求にも直面している。ノルウェー航空の広報は、運航停止で生じる売上高の損失や追加費用に対する補償を全てボーイングに求める方針を示している。ドミノ倒し式に737 MAX型機の運航停止が進んでいるとすれば、ボーイング社に対する賠償請求も同じ道をたどる可能性が大きい。ボーイング社にとって、強気の姿勢を示すより、過失を認めて、それを改めて、品質第一、安全第一の姿勢を示すほうがよいだろう。民間航空業の生命線は安全という言葉が示すように、安全でないのであれば、他のことを論じる余地がどこにあるのだろう? (編集KN)
「人民網日本語版」2019年3月15日