転換を模索する企業にとって、株主の圧力は非常に重くのしかかる。古い業務の消化、新たな販路の開拓はいずれも一朝一夕には達成できるものではないが、株主は年度報告の優劣や株価の短期的な上下しか重視していないことが多い。
スキャンダルにより問われるコーポレート・ガバナンスの欠如
東芝不正会計事件で注目される背景は、日本の金融庁と東京証券取引所が制定し、今年6月1日から正式に導入された「企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)」だ。今年は日本企業の「コーポレートガバナンス元年」とも呼ばれている。日本の多くの上場企業が家族企業体質であったり、人事上色濃い「封建的色彩」が残るなど、日本企業はガバナンスにおいてまだまだ不透明な点が多く存在する。新たな「企業統治指針」では、独立性が高い社外取締役を2人以上選ぶことなどが盛り込まれている。
東芝は創設以来コーポレート・ガバナンスの「優等生」とされ、早くも2001年3月には3人の社外取締役を置くなどの改革を進めてきたが、監査委員会の久保誠委員長(元副社長)は2008年から体系的な不正会計が横行していることを知りながら、何ら行動を採ることはなかった。
第三者委員会の調査によると、外交官2人と元行員1人を含む3人の社外監査委員らはいずれも会計に関する専門的スキルを有していなかった。
麻生太郎財務大臣兼金融担当相は今回のスキャンダルに対し、「本当の意味でのコーポレート・ガバナンスをしなければ、日本の市場、東京証券取引所の名誉は損なわれる」と述べている。