文化財愛好家の宋さんは遼寧省瀋陽市西部に位置する鉄西区内の三洋新華印刷工場が移転する様子を見て、感慨深い思いに浸った。「非常に有名な日本の漫画家、ちばてつや氏が、かつてこの印刷工場の屋根裏部屋に住んでいた。日本が戦争に負けた時、印刷工場で働いていた瀋陽出身の中国人に助けられた」と語った。現在、新華印刷工場の設備の移転は基本的に終了しており、工場の跡地もすでに開発業者に引き渡されている。ちばてつや氏が住んでいた新華印刷工場は近いうちに取り壊されることになる。
■漫画家の旧居、古い瀋陽の記憶
瀋陽新華印刷工場跡地は鉄西区の建設中路と景星街の交差点にある。ちばてつや氏は幼い頃、両親に連れられて瀋陽に移住し、新華印刷工場内に6年間住んでいた。
1945年日本が戦争に負けると、ちばてつや氏は父親と一緒に日本に帰国することになったが、その途中に迷子になり、父親と離れ離れになってしまった。その際、当時新華印刷工場で働いていた中国人、徐集川氏に助けられた。日本に帰国する前、ちばてつや氏の父親はてつや氏が羽織っていた毛布を記念に徐集川氏に贈った。2003年、ちばてつや氏は再び東北の地に足を踏み入れ、当時の恩人を探したが、徐集川氏はすでに亡くなっていた。しかし、徐集川氏の息子が当時の毛布を取り出してくると、ちば氏は悲しみのあまり、号泣した。現在、ちばてつや氏は宮崎駿氏と肩を並べるほど有名な漫画家となっている。