向井さんは、今年4月に文化庁の海外研修制度で北京を訪れ、地下鉄6号線の南鑼鼓巷駅に程近い胡同の中にある中央戯劇学院で中国語を学びながら、執筆活動を続けている。
――胡同は、やはり他にはない景色ですから、興味深いですね。S字型になっているような通りも多くて、一見複雑なんですけど、歩いていると何か目印になるような特徴のあるものがあって、それを一度覚えてしまうとこんなに簡単な構図はないという、そんな地域のような気がします。
街々の胡同ごとに商店街のような通りがあって、定食屋があって、近所付き合いがある。最近は小洒落たカフェみたいなものも増えてきて、昔からいる人々と新しい人々との混ざり合いが見ていて面白いですね。実際に暮らしている人たちには、色々な思いもあるのでしょうがー。
散歩は、日本にいる頃から趣味でした。ただ、こっちでは中国語がまだそこまで話せないので、正直他にやることがないというのもあります。でも、歩きながら色々なものを見ていると飽きないですね。半裸のおじさんたちとか、一芸を持った物乞いの人とか、日本にはない光景が見れて物珍しいです。
先日は、交差点の脇の歩道の土手みたいなところに、釣竿みたいな木の棒を突き刺して座っているおじさんを見かけました。その棒の先から紐が垂れていてそこには亀が結ばれて宙をぐるぐる回ってました。釣られた亀みたいに。しかも、その亀かなり大きいんですよ。あまりにも面白かったので、しばらくじーっと見てましたね。あれは売るためのものなのか?亀の散歩なのか?いまだに不可解ですね。