高齢化が世界一のスピードで進んでいる日本では、65歳以上の高齢者の占める割合が総人口の4分の1を超えた。ここまで深刻化するとは、多くの中国人にとって予想だにしなかったことだろう。日本映画「ペコロスの母に会いに行く」は、全編を通して隠れようもない現実主義的な色合いが濃い映画だ。なぜなら、失業した息子を抱える認知症の母親が老人ホームに送られるというストーリーを見れば、楽天家になれる人などいないからだ。人民網が伝えた。
映画で描かれるのはありがちな苦労話ではない。登場人物はつらい境遇に置かれるが、重苦しい雰囲気はなく、認知症の母と息子とのやり取りを、日常の光景の中でコミカルに描いている。例えば、認知症を発症した母を描写する際、母親本人にクローズアップするのではなく、息子の行動に焦点を当て、母の下着がどんどん少なくなるのを不思議に思った息子が、箪笥を開けると大量の汚れた下着が出てきて、大げさに騒ぎ立てるというコミカルなシーンになっている。老人ホームでも画面に映るのは悲しい表情ではなく、高齢者たちの子供のような笑顔だ。高齢者が悪さをして笑いをこらえたり、リュックを背負って走り回ったりする光景を、カメラは静かに映し出す。それを淡々と見ていると、なぜか心の底から悲しみがこみ上げてくる。
▽2人の長崎人の運命を変えた映画
日本の映画評論家・佐藤忠男氏はかつて、「大和民族は幻想的なシーンの撮影が得意ではない。フェリーニなどの作品と比べると邦画はまだまだだ。超現実的なシーンを見事に描けるのが神業」と語っているが、本作品の結末は非常に幻想的で、称賛に値する。花火が上がる中、認知症の母親は人ごみを避けて、1人橋の上に佇む。母親はそこで子供の頃の自分、亡くなったかつての友人や夫と再会するのだ。