フランスの治安悪化が加速 狙われる中国人観光客
少し前から、フランスを訪れた中国人観光客を狙った犯罪が多発していることが、広く注目されている。複数の中国政府部門は、中国からフランスを訪れた観光ツアーや公務視察ツアーの団員が窃盗などの被害に遭うケースが、この1年間で激増していることを明らかにした。フランスでは、経済の低迷が続き、失業率は高止まりしており、さらには中・東欧から逃げて来る犯罪者が増加の一途をたどり、自国民であるフランス人でさえ、安全が脅かされつつあることを実感している。環球時報が伝えた。
中国駐仏大使館領事部によると、2012年、パスポートの盗難に遭ったため、領事部に手続きに訪れた中国人観光客は、前年比50%増の900人以上に達した。数日前、ある中国人観光客が、春うららかなパリのマルシェに出かけ、パスポートと現金1500ユーロ(約18万円)を盗まれた。別の中国人観光客は、シャルル・ド・ゴール空港で搭乗を待つ間に、手荷物全てを泥棒にこっそりすり替えられ、大損害を被っただけではなく、旅行の続行が不可能となった。そのほか、中国人観光客がパリ郊外のレストランで食事をしていた間に、車の後部トランクがこじ開けられ、数万元(数十万円)相当の高級な撮影器材が盗まれるという事件も起こった。
パリ地区生活安全局のフィリップ・プルニエ局長は中国人客の被害状況について、「パリで窃盗の被害に遭う外国人は、出身国による差はなく、どの国の人もほぼ同じ確率で、人ごみではスリの被害が特に目立つ。中国人観光客が被害に遭うケースが多発している背景には、中国人観光客の数量が激増している状況がある。パリを訪れる中国人観光客数は、年間10.15%ずつ増加しており、中国人が窃盗被害に遭う件数が7.8%増えていることから、全体的にみると犯罪は下落傾向にある」と説明。
取り締まりの状況については、「パリ警察は犯罪の一掃を目指し、さまざまな措置を講じている。例えば、大量の警察力を動員し、有名観光地や大型マルシェなど観光客が集中する場所のパトロールと警戒を強化している。また、今年から、犯罪防止のための監視モニタの設置を実施しており、監視カメラや監視警報システムを構築することで、主要観光地の治安管理強化を図る。これまでに、パリ地区で約2千台の監視カメラの設置を完了、今後もその数をさらに増やしていく」と語った。
フランスのマニュエル・ヴァルス内務大臣は、過去に何度も、国内の治安情勢が悪化している事実を認めている。フランス全国犯罪・刑事処分観察所が発表した3月度統計データによると、2012年3月から2013年2月までの間、憲兵管轄地域内で起こった窃盗事件は37.1%、自動車車内物品の盗難事件は19.7%、それぞれ増加した。特に、暴力を伴った窃盗事件は18.8%増、このうち公共の場で起こった事件は22.7%増、女性を狙った事件は約30%増えた。2012年、フランスでは、90秒ごとに1件の不法侵入・窃盗事件が発生、スリや強盗を含めた被害者の数は330万人以上に達した。
フランス警察が2月に発表した統計データによると、パリ地区での盗難事件の件数は、過去にないスピードで激増している。今年1月、地下鉄車内でのスリ被害者は58%増、パリ北部にあるサンドニ市では、この数は倍増した。安全に対する危機感を抱いているのは、フランスを旅行中の中国人観光客だけはない。フランス人でさえも、自国が安全ではないことをひしひしと感じている。よって、治安の強化は、フランス政府にとって何よりの急務となっている。(編集KM)
「人民網日本語版」2013年4月2日