匿名SNSアプリが近年、多くの若者に人気の「感情を表現できるユートピア」となっている。中国青年報と中青校媒が中国全土の大学生を対象に実施した調査によると、回答者の35.52%が「匿名SNSアプリを使ったことがある」と答えた。しかし、回答者の90.69%は、「匿名での交流には一定のリスクがある」とも答えていた。中国青年報が報じた。
匿名での交流というのは今に始まったことではない。手紙の時代にはペンフレンドがあり、MSNやQQといった初代SNSツール、さらに現在の豆瓣、「樹洞」といった交流プラットフォームなどは、ある意味全て匿名で交流できる場だ。若者が他の人と交流する時にミステリアスな「仮面」をかぶりたいとい考えるのには、いろんな理由がある。
まだ社会経験の乏しい若者は、遠くにいる知らない人に対して、ロマンチックな想像を膨らませているものだ。「ソウルメイトが見つかる」や「同じ星の人が見つかる」などの売り文句を掲げるSNSアプリは、若者のそのようなニーズにマッチしており、若者たちにこうしたアプリを通じて同じ趣味を持つ意気投合できる仲間が見つかると信じさせている。また知り合いとの人間関係に疲れているというのも、匿名のSNSアプリに「交流の場を移す」主な理由となる。微信(WeChat)のモーメンツにちょっとネガティブな投稿をすると、両親からあることないこと勘ぐられ、同級生に思いっきり愚痴を吐きたいのに、あれこれ心配もしないといけない時など、若者は心を開いて本音を話せる「オンライン駆け込み寺」に駆け込むのだ。
また、「コミュ障にもやさしい」というのが、匿名SNSアプリの特徴だ。ある大学生は取材に対して、「匿名という『保護』の下で、自分の気持ちや本音を何の心配もせずに話せる。匿名という状態なら、現実の世界ではコミュ障でも、サイバースペースではとても社交的になれる」と話した。
しかし、匿名での交流にはメリットもたくさんあるものの、デメリットもある。相手が誰かが分からない状態では、インターネットを通じて向こうにいる人が、誠意ある人なのか、胸に一物ある人なのかを知る手立ては何もない。ニュースでは、匿名のSNSを利用して相手を信頼させ、悪徳商法へと巻き込んだり、知らず知らずのうちに自分の個人情報が漏えいしたり、電話詐欺に遭ったといった事件をよく目にする。匿名での交流の「内密性」に目を付ける悪意ある人は、心を許して本音を話す相手のすきにつけ込む。そして、そこは、詐欺が横行する場となってしまう。
そのため、コミュニティのエコロジカルを守り、プラットフォームが詐欺師が集まる場所となるのを避けるというのが、匿名のSNSプラットフォームが担う必要のある責任となる。
一部の大学生が匿名SNSにハマるのは、本来の人間関係を築く能力が低いからだ。両親とうまく意思を疎通させることができなかったり、学校で自分の居場所を見つけることができなかったり、友達がほとんどいなかったりする若者は、気分的に落ち込んだりすると、オンライン上のコミュニティで、言いたいことを言ってうっぷんを晴らし、慰めを求める。
このような正常な感情や心理的ニーズと向き合うほうが、若者に匿名での交流には注意するようにと頭ごなしに言うよりも大切であるはずだ。親は、子供と対立したり、批判したりする話し方を改め、子供の考えに同意できなくても、それをいったん横に置いておく姿勢を適度に持ち、子供たちが進んで心を開いて話しができるようにし、平等な目線で、自由に交流できるようにしなければならない。専門の心理カウンセラーを置くほか、高等教育機関は、先輩後輩からなる「駆け込み寺」を設置することを模索できる。同じ世代のカウンセラーなら、学生の悩みなどを親身になって聞いてもらえるほか、心配や恥ずかしさなどをある程度和らげることができるはずだ。
多くの若者は、匿名SNSアプリのアカウントを作る時、関心を示されたい、理解してもらいたいという気持ちを抱いているものだ。しかし、現実の人間関係におけるいろんなしがらみや心配ごとというのは、もしかすると単なる杞憂であるかもしれない。実際の人間関係において、肩の力を抜いて心を開き、楽しく交際をしてみると、抱えていた悩みや不安は大した問題ではないということに気付くかもしれない。実際の交流で得られる心の底から感じる喜びと満足感は、匿名での交流では永遠にえることができないからだ。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年11月15日