「山川域を異にすれども、風月天を同じうす(山川異域、風月同天)」 。これまでに数多くの人を感動させてきたこの漢詩が書かれた書道作品が、8月中旬のオークションに出品される。中国新聞網が報じた。
オークション会社・中国嘉徳はこのほど、「2020年北京春季オークション」を近く開催すると発表した。今は「春季」ではなく、中国で例年春に開催される各オークションよりも約2ヶ月遅いものの、多くのメディアの注目を集めている。
中国嘉徳の副総裁で、中国書画の総責任者である郭■氏(■は丹へんに彡)は、「今年の春のオークションに出品される作品4500点のうち、最大の目玉は日本の画家・東山魁夷が1970年代に書いた『山川異域、風月同天』だ」としている。中国嘉徳の公式サイトを見ると、同作品の参考価格の覧には「最低落札価格設定なし」と書かれており、出品者が価格よりもその象徴的意義を重視していることが分かる。
中国嘉徳の公式サイトのスクリーンショット
「山川域を異にすれども、風月天を同じうす」という言葉の歴史は、1千年以上前の唐の時代にまで遡ることができる。
実際には、この詩は、「山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁(山川域を異にすれども、風月天を同じうす。諸の仏子に寄せて、共に来縁を結ばん)」という4句からなる。
唐の時代の高僧・鑑真はこの詩に感動して、日本に渡ることを決意したと言われている。
中国嘉徳の2020年春季オークションのプレビュー展示会場に展示された東山魁夷の作品「山川異域、風月同天」(撮影:宋宇晟)。
半年前の「風月天を同じうす」
しかし、「山川域を異にすれども、風月天を同じうす」という詩がネット上で話題をさらったのは、約半年前のことだ。
中国嘉徳の2020年春季オークションのプレビュー展示会場に展示された東山魁夷の作品「山川異域、風月同天」(撮影:宋宇晟)。
中国全土で新型コロナウイルスが猛威を振るっていた今年1月下旬、拡大防止は非常に難しい情勢だった。そして、中国全土から湖北省と武漢市に医療物資が送られ、医療従事者が支援に駆けつけた。また、日本各界も武漢に衛生用品や医療物資を寄贈していた。そのうち日本の中国語検定HSK事務局が寄贈した物資の箱に、「山川域を異にすれども、風月天を同じうす」という文字が書かれており、注目を集めた。
2月4日、中国外交部(外務省)の華春瑩報道官が定例記者会見で、それに対する感謝の意を示した。
今年8月、中国嘉徳の郭氏は、東山魁夷の作品「山川異域、風月同天」について、「中国と日本の人々の友情だけでなく、人類共通の気持ちを表現していると思う。困難な時ほど、私たちは芸術を通して心が通じ合っていることを感じることができる」と語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年8月13日