これについて、上海外国語大学中東研究所の劉中民所長は「今回イランが米国に対して行なった軍事的報復は、総合的に見て象徴的意義の方が大きい。1つには派手な報復行動によって民衆の怒りに応えようとしたものであり、もう1つには米国とイランが互いにレッドラインを探る1つのプロセスでもある。だが現在の発展の趨勢を見ると、双方は自らの利益を考慮し、いずれも正面切っての戦争は望んでいない。次の段階では『相手が行動したからこちらも行動する』形の報復が起きる可能性が排除できず、『冷たい対立』や時折生じる『限定的衝突』が常態となるかもしれない。だがやはり互いにレッドラインは堅く守り、大規模な戦争に向かうのは回避する」と指摘する。
注意すべきは、2018年に米国がイラン核合意からの離脱を宣言して以来、米国・イラン両国の駆引きがエスカレートし、互いに相手国のレッドラインに挑戦し続け、「戦争瀬戸際」政策を弄していることだ。ソレイマニ事件以降は、さらに白熱化し、もろい均衡が打ち破られ、相互不信が急速に深まっている。双方の危機処理能力が強く試されることになる。また、中東地域における核不拡散の問題もさらに複雑化する。米国・イラン両国の地域の同盟国も混乱に陥り、安全保障上のリスクへの対処圧力がにわかに増大する。
中国社会科学院西アジア・アフリカ研究所の唐志超政治室長は「米国とイランの対立がエスカレートすることで、中東地域の動揺が激化し、地域情勢の推移における不確定性が増す。双方の戦闘はイラク、シリアなどで繰り広げられる可能性があり、サイバー空間や無人機など非伝統分野で繰り広げられる可能性もある。これは過激派組織『イスラム国』や『アルカイダ』などに息を吹き返す機会を与え、本来はすでに好転していた地域のテロ対策情勢に新たな変数を加えるかも知れない」と指摘する。
米国とイランの対峙のエスカレートは、世界の経済発展と平和・安定にも重大な影響を与える。すでに国際石油市場に衝撃が走り始め、国際エネルギー市場への供給が脅かされている。主な危険性は▽イラクの石油の生産・輸出が脅かされる恐れ▽米国とイランによるイラクでの衝突が湾岸地域へと拡大する恐れがあり、ペルシャ湾で商船が再び攻撃される可能性を排除できないこと――から来る。米国とイランの対峙のエスカレートは、米国の世界戦略及び大国との関係、大西洋を跨ぐ同盟国間の団結、国際軍備管理などにも重要な影響を与える。両国の対立が激化するに従い、国際社会によるイラン核合意の維持は一層難しくなる。(編集NA)
「人民網日本語版」2020年1月9日