米軍がイランのイスラム革命防衛隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を無人機攻撃で殺害したことによって引き起こされた危機は、今も高まり続けている。今回の行動は今世紀に入って最もセンセーショナルな軍事的冒険行為の1つと言え、米国による覇権の恣意的な行動という一面が改めて示された。(文:李崢・中国現代国際関係研究院米国研究所副研究員。環球時報掲載)
今回の事件及び近年の一連の「斬首作戦」を見ると、米国にとって情報能力に基づく精密な軍事行動は通常の作戦方式となり、情報覇権は最も根本的な覇権能力の構成部分となりつつある。
現在の世界において米国の情報能力はすでに覇権的特徴を備えている。つまりその能力の優位性は、すでに戦略的抑止力となり、情報以外の分野にも応用できるようになっている。米国の戦略標的にとって、米国のシステム化された監視・浸透・サイバー攻撃・プロジェクト能力を前に、いかなる個人も無力であることは明らかだ。
米国の同盟国にとって、米国から得られる共有情報は重要な戦略資源であり、国家安全保障にとって代替不能な拠り所となっている。情報に基づき生じるこのような戦略依存は、米国のコントロールから脱することができず、真の戦略の自主性を実現できない主たる原因の1つだ。
米国の情報覇権は決して一分の隙もないわけではない。このような覇権の最大の欠陥は過度の強大さと覇道にある。情報覇権及びそれによって生じる「deep state」は米国のいわゆる三権分立制度を蝕み、米国内のボイコット・ムードを激化させ続けている。スノーデンら情報機関の内部「密告者」は、まさに米国による情報覇権の副産物だ。こうした人物は今後も引き続き出現するだろう。これはある程度において、米国による情報覇権の合法性を内部から瓦解させている。
他の多くの国々は情報覇権を通じて価値観における米国のダブルスタンダードを認識するにいたり、米国のいわゆる「普遍的価値」を信じなくなってもいる。同様の事件によって各国政府は、現代世界の国家間の競争において、その残酷な本質が変わっていないことも認識している。真の勝負は往々にして最も隠された部分で起きており、どの国もこのために最良の能力を蓄え、最悪の事態を想定しておく必要がある。(編集NA)
「人民網日本語版」2020年1月8日