二、米国国内においてNBAがその従業員の言動に対して行う制限とは?
まず最初に結論を述べるならば、NBA及び全てのチームのオーナーはいずれも自身の従業員やメンバーの言動を制限する権利を有している。これは表現の自由とは本来関係のないものだ。
ロサンゼルス・クリッパーズのドナルド・スターリング氏が人種差別的な発言でNBAから永久追放処分を下されたケースをその例としてみてみよう。
「2014年4月26日、ロサンゼルス・クリッパーズのオーナーを務めるスターリング氏がその恋人との口論の際、恋人に対して黒人の友人と一緒に撮った写真をSNSに投稿すべきではないとマジック・ジョンソン選手を名指しにした人種差別的な発言を行い、その録音テープをゴシップサイトのTMZにスクープされた。4月30日、NBAコミッショナーのアダム・シルバー氏はスターリング氏をNBAから永久追放し、罰金250万ドルを科す決定を行った。それだけでなく、シルバー氏はその権限の全てを使っても、スターリング氏を退任させるとし、その後まもなく、深刻な社会的プレッシャーを受けたスターリング氏はクリッパーズを売却することとなった。」
NBAの事件に関心を抱いている人ならば誰でも今日のニュースを目にしたことだろう。これはつまりNBAはダブルスタンダードであり、NBAはメンバーを制限する能力だけでなく、メンバーの言動を制限する能力も備えていることを示している。
ではなぜスターリング氏は徹底した処分を受けることになったのか。それは彼が米国の政治的な正当性においてタブーである人種差別に関わる発言をしたためだ。シルバー氏がスターリング氏に対して行ったチームを無理やり売却させるといった行為は、米国社会の生態である、民族主義は一切認めないという態度に完全に一致しているためだ。こうしたやり方は、一方ではNBAの政治的な態度を示し、もう一方ではクリッパーズを論争と紛糾から救い出すためと言える。
ここで再び主題に戻ることにしよう。NBAはプレーヤーたちの表現の自由を制限しているのだろうか?ビジネス機関として、NBAはその従業員を制限する権利を有しており、彼らの言動を制限し、処罰を与える権限を有している。これはNBAのビジネスとしての決定であり、政治的な意味での表現の自由とは無関係だ。
もしNBAのこうした行為に対して不満を抱いた場合でも、できることと言えばNBAからボイコットするという選択くらいしかない。
NBAがその従業員の言動を支持する表明をした場合、それはきっと政治的な正当性や争いとは全く関係のない、無害な話題であるとみなされた場合に限るだろう。NBAは米国社会を非常に熟知しており、人種問題に関しては極めて敏感だ。彼らは社会的な感情を察知し、「正しい」判断を下し、NBAの社会的イメージと経済利益を守るためならば、何の躊躇もなく従業員(すなわちプレーヤーたち)の表現の自由を制限するだろう。
そのためNBAが表現の自由を擁護し、ひいては従業員の言動に干渉する権利はないとするのは、全くもってでたらめとしか言いようがない。
三、NBAと中国政府、公式メディアと民衆の反応
1、ヒューストン・ロケッツGMのダリル・モリー氏について
1)ダリル・モリー氏は香港についてきちんと理解しているとは思えず、欧米の主要メディアの影響を受けているだけだろう。彼の事件に対する判断は米国の主流である判断にほぼ一致しており、彼は単に米国人としての言葉を発したに過ぎない。
2)ダリル・モリー氏が擁護している「自由」とは米国の政治における正当性であり、米国国内であれば、彼は道徳的な正しさから高みに立つことができただろう。
3)ダリル・モリー氏はきっと心の底から彼の言ったことを信じているのだと思う。彼のことを事情を分かっていない、または無知ということもできるが、これは主に米国メディアの偏向報道の結果と言えよう。
4)ダリル・モリー氏の態度表明は別の国の言論に対してのものだが、結果としてその国を侮辱することになった。しかもその国はヒューストン・ロケッツの重要な経済的利益の提供者であり、スポーツは政治ではない。ダリル・モリー氏に権限が与えられていなかったのであれば、ロケッツのために政治的な表明をする権限もなかったはずだ。そしてその表明はチームに経済的利益の損失をもたらした。
5)中国に対して理解していなかったため、中国人の反応を過小評価していたと言わざるを得ない。
6)中国に対しては当然の如く尊重することなどせず、傲慢で、基本的な尊重という意識すら欠けている。