土を食べるしかないほど貧乏という意味の「吃土」というのは、中国のネットで使われているネット用語だ。しかし、河南省には本当に土を食べる地域がある。河南省済源市王屋山付近の村民の家には、必ずと言っていいほど「土饃」と呼ばれる食べ物がある。「土饃」は小麦粉の生地と土を一緒に炒めて作るという独特のレシピで、歯ざわりはサクサクという済源の地元グルメだ。
愚公土饃無形文化遺産伝承人の樊双旗さんは、土饃を作って30年以上になり、「土饃は、説話『愚公山を移す』の時代に発明されたという言い伝えがある。その昔、愚公は王屋山の土を渤海に運ばなければならなかったものの、とても長い道のりで、保存可能な食べ物が必要となった。その際、土で炒めた食品は長時間保存でき、味もいいため土饃を編み出し、今に至るまで伝わっているという」と紹介してくれた。
土饃を作るときに最も重要なのは原料。土は済源の地元の観音土でなければならない。観音土は細かく硬くて、不純物が全くない。掘った土を用意して砕き、それをふるいにかけ、加工すると、メリケン粉のように細かくなる。炒めるために使う土の原料を作るだけでも半日かかるという。
また、地元の十分に発酵させた生地を使わなければサクサクした食感にならないという。粉を練る時に入れる原料によって、その味も変わる。練った粉を丸い形または棒状にし、200度以上に熱した土の中に入れ混ぜながら炒めていく。十分に火が通った後、もう一度ふるいにかけ、余分な土をふるい落とせば、土饃の出来上がりだ。
土饃を作って30年以上になる樊さんは、「以前は主に地元の人が土饃を買ってくれていた。でも、今はネット通販が普及したため、ショッピングサイト・淘宝を通して、中国各地の人々が購入している。済源にも淘宝で土饃を売っている人がたくさんおり、みんな私から仕入れている。重さにして年間5万キロ分売れ、利益は10万元(1元=約16.62円)以上」と説明する。
そして、「周囲数十キロの山地に住む住民はみんな土饃が好き。出稼ぎに出かける時も土饃を持って行って、ホームシックになった時にそれを食べるとすぐに気分がよくなる」とし、「土饃の作り方を学ぶ若者は減るばかり。古くから伝わっていた技法は既に分からなくなってしまった。私は土饃への思い入れがとても強い。一人でも多くの人が土饃を作り続け、一人でも多くの人がそれを食べて故郷のことをしっかり記憶にとどめることを願っている」と話した。(編集KN)
「人民網日本語版」2019年4月15日