私は、中国人の若い同僚と仕事に関する悩みについてよく話す。例えば、大企業と小さな会社のどちらがいいのか、上司とどのように良い関係を保つか、会社員がいいか、それとも起業したほうがいいのかなどだ。(文:関田剛司。瞭望東方周刊掲載)
日本の最近のある調査研究が議論を呼んでいる。その研究結果が中国の若者に啓発を与えてくれるかもしれない。
東京大学社会研究所はこのほど、NHKと共同で会社員を対象に「仕事」をめぐる調査研究を実施した。この調査研究では主に、「勤務時間」、「所得」、「人間関係とストレス」、「効率」に関して調査を行った。
研究者は企業数百社の従業員数十万人を対象に追跡調査とアンケート調査を実施し、1日当たりの会議回数、送信するメール件数、かける電話の本数、飲んだコーヒーの杯数、上司や同僚と何度会話したか、など細かなデータを記録した。
そして、人工知能ロボット「AIひろし」も使ってデータ収集を行い、これらのデータを基にクラウドコンピューティングでビッグデータの分析した。
数ヶ月に及ぶ調査で、研究者らは常識を覆すような多くの「真相」を突き止めた。
例えば、大企業は経営が安定していて高収入が得られるので、そこで働くことに多くの人があこがれるというのが一般的な考え方だろう。しかし、調査では、大企業で中間管理職・管理職に就いている人は、「人間関係のストレス」や「長時間の残業」、「仕事の効率」に強い不満を感じている一方、中小企業で働いている所得が比較的低い人のうち、仕事に「とても満足している」と答えた人は25.2%もいた。
ある大企業で管理職に就いている人は、「勤務時間のうち、会議が3分の1、報告メールの作成が3分の1を占めており、残りの時間も、上司の意図に沿ったプランを作成するために使っている。何度も考え直したり、やり直したりしても、プランが通らなければ、また考え直さなければならない。上司が満足してくれるまで、残業しているふりをする時もある」と肩を落とす。
一方、中小企業の従業員の多くは、仕事に比較的融通が利くため、幸福感も高い。
ある中小型企業の女性従業員は、「繁忙期は1日12時間以上働くが、ある程度自由が利く。もし2日連続で10時間以上働いたら、次の2日間は6時間ほどに調整する。それにより、体調をベストの状態に回復させ、やる気十分で仕事ができる。所得は多くないが、仕事にはとても満足している」と話す。
調査では、疲労感と過労死は、実際には仕事の量とはあまり関係がなく、人の精神状態と密接な関係があることも分かった。
日本には、「職場の権力(パワー)を利用した嫌がらせ」を指す「パワハラ」という言葉がある。パワハラは、うつ病や急逝、自殺の本当の原因であることが多い。
日本の国会は現在、過労の状態が原因の生理的・心理的疾患を減らすために、労働時間の上限規制に関する法律の制定を目指している。しかし、労働時間を制限するというのは一時的な解決策に過ぎず、抜本的な解決策にはならないという調査結果もある。
従業員が幸福感を感じられるかどうかは、そのやる気を引き出せるかにかかっている。どれほど輝かしい歴史があり、規模の大きい企業であっても、従業員が積極的になれるような職場でなければ、従業員の幸福感は低く、効率も伸びないだろう。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年4月2日
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