世界反ファシズム戦争に参加した世代の人々はほとんどが高齢で、歴史の証人は減り続けている。あの悲惨な戦争に対して共通の理解を持ち、人類共通の記憶を形成することが極めて重要だ。(文:入江昭・米国の著名な歴史学者、元アメリカ歴史学会会長)
中国の抗日戦争は世界反ファシズム戦争を構成する重要な一部であり、国家、国際、そして「国境を越える」という3つのレベルで中国の犠牲と貢献を理解することができる。
中国にとって1930、40年代の抗日戦争は国家の存亡に関わり、その勝利は中国史の重要な転換点となった。国際関係のレベルから理解すると、中国は日本軍国主義への抵抗の中核的パワーであり、世界反ファシズム戦争のアジアの主戦場であり、世界反ファシズム戦争の勝利に卓越した貢献を果たすとともに、戦後国際秩序の形成において重要な役割を発揮した。国境を越える往き来について言うと、世界反ファシズム戦争への参加を通じて中国の人々は連合国の人々と幅広く接触した。戦争体験者にとってこれは深く記憶する貴重な経験であり、後に中国の人々の世界に対する見方に重要な影響を与えた。
近代的意味における主権国家はまず欧州で出現し、続いて国家の観念が世界の他の地域に広まった。20世紀になると誰もが国家レベルのアイデンティティーを持ち、国家が脅威にさらされると、民族自決と独立運動が興った。近代以降の中国の人々の闘争史は「民族振興、国家独立」という言葉に総括できる。中国の人々の不撓不屈の闘争は国家統一の追求と保持という目的のためだった。
1930、40年代には世界分裂の趨勢が顕著になり、最終的に敵対する国家集団を形成し、ナチス・ドイツと日本軍国主義が枢軸国を形成して侵略・拡張をおこなった。ナチス・ドイツと日本の侵略が激化するに伴い、米ソは接近し続け、肩を並べて戦った。中国は反ファシズム戦争の全期間を通じて米ソ両国と緊密な関係を保ち、国際関係史において中心的役割を果たした。