両陛下、8年ぶり沖縄入り 戦没者慰霊施設を訪問
国立沖縄戦没者墓苑で供花を終えた天皇、皇后両陛下=17日午後2時54分、沖縄県糸満市、山本壮一郎撮影 |
【北野隆一、島康彦】天皇、皇后両陛下は17日、「全国豊かな海づくり大会」出席のため、8年ぶりに沖縄県入りした。両陛下の訪沖は皇太子夫妻時代から通算して今回が9回目。到着後、まず沖縄戦の慰霊施設を訪れた。沖縄訪問のたび欠かさず訪ねている。
糸満市の沖縄平和祈念堂では、県立第二高等女学校出身者でつくる「白梅同窓会」の中山きく会長(84)ら3人が迎えた。戦時中、白梅学徒隊として野戦病院で傷病兵を看護した犠牲者が、糸満市の「白梅之塔」にまつられている。
皇后さまは「塔はどちらですか」と尋ね、両陛下はその方向へ深く拝礼した。塔に供えるようにと花束を両陛下から手渡された中山さんは「胸がいっぱいになりました」。
両陛下は続いて国立沖縄戦没者墓苑で、白菊の花束をささげた。沖縄戦で父や祖母、きょうだいを亡くした県遺族連合会の照屋苗子会長(76)が、墓苑前で両陛下を迎えるのは3回目。皇后さまは「草の苗の苗子さんね。覚えています」。天皇陛下は「遺族も高齢化しているから、よろしくお願いします」と語ったという。照屋さんは「肉親を亡くした悲しみは一生癒えない。でも、両陛下が沖縄に心を寄せたお言葉は励みになります」と感慨深げだった。
墓苑前で迎えた「ひめゆり平和祈念資料館」の本村つる元館長(87)の前でも両陛下は足を止め、「資料館はどうですか。子どもたちが勉強に来ていますか」と声をかけたという。
宿泊先のホテルでは、1944年8月に米軍に撃沈された学童疎開船・対馬丸の遺族らでつくる「対馬丸記念会」の高良政勝会長(72)が迎えた。対馬丸からの生還者で、家族9人を亡くした高良さんが「姉と私だけが助かりました」と話すと、皇后さまは「大変だったでしょう」と応じた。
両陛下は対馬丸事件に深い関心を寄せてきた。撃沈された8月22日には黙祷(もくとう)しているといい、天皇陛下は97年の誕生日記者会見で「私と同じ年代の多くの人が含まれ、痛ましい」と発言。皇后さまも05年の誕生日に際し「対馬丸撃沈で亡くなった児童たちも、無事なら今は古希でしょう」と述べている。記念会は04年に「対馬丸記念館」を那覇市に開設した。高良さんは「ぜひ両陛下においでいただきたい」と話している。
asahi.com 2012年11月17日
Copyright 2012 Asahi Shimbun 記事の無断転用を禁じます。