患者に伝統療法の「火竜灸」の治療を施す医療従事者。(写真提供は杭州市中医病院)
浙江省の杭州市中医病院の推拿科の外来診察室に足を踏み入れると、各診療室で患者が推拿をはじめ、吸い玉療法(カッピングセラピー)、もぐさのお灸、牽引といった中医学の治療を受けていた。患者の大半は若い人だった。中国新聞網が伝えた。
30分間の推拿の治療を終えたばかりの袁青さん(26)に話を聞いた。企業でコピーライターをしている袁さんはデスクワークの時間が長く、最近、「背中の筋肉が痛くてどうしようもない」ので、友人にすすめられて、すぐに推拿科を受診したという。「今ちょうど腰の推拿と頸椎の整骨をしたところだ。初めて中医学の推拿治療を受けてみたが、とても『不思議』な感じがした。治療中に突然、骨がパキッと鳴ったと思うと、体が大分楽になったように感じた。医療保険を使えば治療費も安く、数十元(1元は約19.5円)にもならない」と袁さん。
現在、中国の多くのZ世代が伝統的な中医学の診療テクニックに注目し始めている。多くのSNSプラットフォームでは、各地の中医病院の推拿科が若者の間で密かなブームになっている。
中医師の屈慶さんによると、現在、屈さんの働く病院には前出の袁さんのような若者が多く訪れ、週末ともなると20-30代の患者でいっぱいになり、診察室の外の通路にもたくさんの人が立って待っている状態だ。推拿の治療を受けるには事前予約が必要であるにもかかわらずだ。現代は社会や生活のリズムが速く、悪い姿勢や生活習慣が積み重なって、これまでは中高年の病気だった頸椎症が徐々に若年化の傾向を示し、青少年にまで広がりつつあるという。
若者はなぜ中医病院の推拿科を好むのか。屈さんは、「中医病院の大きな優位性は専門性と信頼性がより高いことにある」との見方を示した。
屈さんは、「一般的に、専門的な推拿科の医師は10年近くかけて体系的な理論を勉強し、臨床技能の実践経験を積まなければならない。中医学の基礎を着実に身につけている上、現代の解剖学も非常によく理解して、解剖学の側面から骨格や筋肉などの構造を把握することもでき、臨床診断と分析を適切に行うことができる。推拿で用いる力は、本質的には機械的な力である巧みな力であり、乱暴な力や無理な力をかけるものではない。力のかけ方が正しくなければ筋肉がけいれんして抵抗力が生じ、表層筋がますます硬くなる。それに対して巧みな力ならインナーマッスルにはたらきかけることができ、筋肉の深層と表層が同時にリラックスするという効果が得られる」と説明した。
また、病院では推拿や整骨などの治療の前に必ずレントゲン、CT、MRIなどの検査をして画像診断を行っており、治療の方向性が適切になるだけでなく、禁忌のリスクを避けることもでき、安全性がより高いと言える。
同時に、インターネットでは中医学文化が「口コミで広がる」中で「二次拡散」を実現し、より多くの若者が中医学の推拿や物理療法に対する理解を深めている。
浙江省中医病院の高祥福院長は、「中医病院を好むのは中高年というステレオタイプのイメージと異なり、現在は中医病院を受診する人のうち、圧倒的多数を占めるのは若者層だ。当院を昨年受診した患者の年齢について統計をまとめたところ、18-40歳が過半数を占める一方で、65歳以上の高齢者は10%に満たないことがわかった」と述べた。
屈さんは、「もちろん、『治療が3割、養生が7割』と言われている。若い人、特にZ世代に対しては、医師に全てお任せではだめだ。推拿が終わったら、医師に教わった頸椎や腰椎を鍛える方法を常に繰り返して練習し、よい習慣を身につけ、体をよく動かさなければならない。これこそが長期的な養生の道だと言いたい」と述べた。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年4月18日